たぱぞうの米国株投資

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海運会社ランキングと海運不況

海運会社ランキングと海運会社の不況

 海運会社が苦境に陥っています。2016年秋には韓国最大で世界ランキングで7位だった韓進海運が実質破たんしました。その後、韓進海運は2017年2月に裁判所から破産宣告を受け、創業40年の節目の年に消え去ることになりました。

 

 今後は粛々と事業整理を進めることになります。なお、韓進海運は大韓航空などと同じ韓進財閥のうちの一社です。

 

 一方、国内3大海運会社である、日本郵船、商船三井、川崎汽船はコンテナ事業の統合を決めました。国内会社のコンテナ事業は殆ど一社に絞られます。これは歴史を振り返っても劇的と言って良く、政府の力が無ければ成り立たなかったことでしょう。

 

 日本郵船は2450億の赤字に伴う無配転落、川崎汽船は940億円の赤字、商船三井は30億の赤字と軒並み赤字になっています。

 

 トップのマースクラインも5000億円以上の黒字から1000億の黒字となっており、利益を大幅に縮小しています。

 

 ここで、世界の海運会社のランキングを見てみたいと思います。TEU、という単位は20フィートコンテナに換算した単位です。ざっくりいうとこれが大きければ大きいほど船をたくさん持っているということです。

  海運会社   国名 TEU シェア
1 APM-Maersk マースクライン デンマーク 3,205,569 15.50%
2 Mediterranean Shg Co メディテラニアン(MSC) スイス 2,790,816 13.50%
3 CMA CGM Group CMA-CGM フランス 2,144,900 10.30%
4 COSCO Container Lines コスコ 中国 1,560,999 7.50%
5 Evergreen Line エバーグリーン 台湾 991,470 4.80%
6 Hapag-Lloyd ハパック・ロイド ドイツ 933,556 4.50%
7 Hamburg Süd Group ハンブルグ・スド ドイツ 595,627 2.90%
8 OOCL オリエント・オーバーシーズ 香港 568,229 2.70%
9 Yang Ming Marine Transport Corp. ヤンミン 台湾 560,762 2.70%
10 UASC ユナイテッドアラブ UAE 544,680 2.60%
11 MOL 商船三井 日本 510,329 2.50%
12 NYK Line 日本郵船 日本 505,969 2.40%
13 Hyundai M.M. 現代商船 韓国 457,080 2.20%
14 PIL (Pacific Int. Line) マリアナ海運 シンガポール 365,284 1.80%
15 K Line 川崎汽船 日本 352,230 1.70%
16 Zim ツィーム イスラエル 322,365 1.60%
17 Wan Hai Lines ワンハイラインズ 台湾 219,224 1.10%
18 Hanjin Shipping 韓進海運 韓国 169,808 0.80%
19 X-Press Feeders Group X-Press Feeders シンガポール 155,981 0.80%
20 KMTC 高麗海運 韓国 124,730 0.60%

Alphaliner - TOP 100 - Existing fleet on November 2016

 

 このデータを公表しているALPHALINER社はフランスで海運専門誌を発行しています。ホームページを持っており、毎月の海運会社のランキングを発表しています。

 

1位のマースクラインは、日本でもよく見る「Maersk」の海運コングロマリットです。歴史は1904年にさかのぼり、シェアは圧倒的です。コンテナ世界3位だった英蘭系のP&O ネドロイドを買収するなど、M&Aを活発に行っています。この会社は同族経営です。

 

2位のメディテラニアン・シッピングはスイスです。MSCといったほうが通りが良いかもしれませんね。スイスは海洋国ではないのになぜ?と思われるかもしれませんが、もともとはイタリアを起源とする会社です。フィリップモリスも本社はスイスですね。創業家のアポンテ家によって経営されており、1970年以降に買収によって急激に大きくなりました。

 

3位のCMA CGMはフランスです。マルセイユに本社があります。1851年に創業はさかのぼりますが、フランスの国営含む様々な海運会社が一緒になってできた会社です。リーマンショック以来、経営は順調とは言えません。フランス政府の支援を受けています。

 

 この3社が世界海運のビッグ3ですが、4位のコスコなど中国系も急速にシェアを伸ばしています。日本の海運大手3社である日本郵船、商船三井、川崎汽船を全部合わせてコスコと同程度になります。

 

 どの業界においても中国企業はキープレーヤーになりつつあります。

海運不況から見る世界経済

 リーマンショック前までは世界の海運会社は好景気に沸いていました。しかし、リーマンショック後、海運需要が急激に冷え込みました。これは、リーマンショックを経て、株価は回復しているものの、実質経済の需要はさほど回復していないことを示唆しています。

 

 リーマンショック後、今まで海運需要を支えてきたのは中国でした。リーマンショック後の世界経済は中国が推進役を果たしていたと言って良く、海運も中国需要によって凌いでいました。

 

 しかし、2015年の夏と2016年の初頭のチャイナショックで分かるように、中国の成長が鈍化してきています。鉄鉱石、石炭などの需要が落ちているのを見ても明らかです。

 

 下のグラフはバルチック海運指数のチャートです。バルチック海運指数というのは、様々な船の運賃を1985年1月4日を1000として基準化し、出している数値です。リーマン前は11793を記録しましたが、2016年11月現在はリーマン後の安値とほぼ同じ652まで落ちています。すさまじい価格変動です。

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バルチック海運指数 - K-ZAI Charts Collection

 

 海運会社でリーマン前に需要を当て込んで、多くの船のオーダーを出したところは押しなべて苦しんでいます。投資に見合った回収ができないからです。この激しい変動を読み切ることはほとんどの海運会社で不可能だったはずです。日本の海運会社の株価を見ても明らかです。

 

 実際に日本でも第一中央汽船、ユナイテッドオーシャン・グループが会社更生手続き中です。韓国の韓進海運だけでなく、現代海運も苦境にあります。

 

 海運業界の苦境は今後も続き、業界地図の塗り替えが続くことでしょう。そしてそれは、世界経済が基本的には脆弱であること、株式市場の変動に備えておかなくては退場の危険さえもあることを伝えてくれているように見えます。

 

 市場の暴落は想像したくありませんが、常に頭の片隅においておいて良いと思います。米国企業がこのような業種からさっさと退場しているのは「らしい」ですね。