たぱぞうの米国株投資

米国株投資ブログ。某投資顧問のアドバイザー。メディア実績/日経マネー・ヴェリタス・CNBC・ザイなど

石油株の今後の見通しと、特徴を押さえた買い方

石油株の今後と見通しと株価について

 石油株は昔から人気があります。比較的高配当で、安定した収益が見込めたからです。ジュレミー・シーゲル先生が、石油株を始めとするオールドエコノミー株を推奨されたことも大きく影響しているでしょう。

 

 私たち日本人でもエクソン【XOM】やシェブロン【CVX】といった大手石油会社をポートフォリオに加えている人は少なくありませんね。

 

 私もかつてはロイヤルダッチシェル【RDSB】を持っていました。7%を超える配当利回りで、原油安の時には減配も懸念されました。しかし、無事に乗り切ることができましたね。

 

 さて、この石油株ですが、当然ながら原油価格に大きな影響を受けます。その原油価格は以下の3つが大きな要因になっています。

  1. 地政学上のリスク
  2. 需給バランス上のリスク
  3. 生産コスト上のリスク

 以下、説明を加えてみたいと思います。

地政学上のリスク

 地政学リスクは中東や南米の石油産出国にある、政治的な混乱が価格に及ぼす影響のことを指します。

 

 古くはイラン・イラク戦争、あるいは湾岸戦争なども大きな影響がありました。直近の有名な例では、いわゆる「アラブの春」が想起されます。2010年12月にチュニジアで発生したジャスミン革命に端を発した運動です。中東・北アフリカ地域で反政府運動が拡がった一連の運動ですね。

 

 この時は、原油価格が激しく変動しました。2010年12月初めには1バレル当たり70ドル以下だったWTI原油価格は、年明けにはたちまち100ドルを超える高騰を見せました。

 

 エジプトやアルジェリアを始めとする産油国における混乱や、リビア産原油の供給がストップしたことが大きな原因になりました。

 

 「アラブの春」の中心となった中東や北アフリカ地域は、世界の原油貿易量の半数以上を占めます。そのため、この地域の地政学的リスクを改めて浮き彫りにした形になりました。

需給バランス上のリスク

 次に、需給バランス上のリスクですね。かつては石油メジャーによる調整があり、その後はOPEC、あるいはロシアなどOPEC外の産油国による協調でバランスが保たれていました。

 

 そのバランスにインパクトを与えたのは、21世紀に入っての最大のエネルギー革命であるシェールオイルの開発です。これにより、米国は世界最大の石油産出国の1つとなっています。

 

 国際エネルギー機関(IEA)の発表では、2024年までに米国の石油輸出がロシアを抜き、サウジアラビアに次いで世界2位になるということでしたね。

 

 また、米国はすでに石油の輸入よりも輸出のほうが多くなるという、統計以来初めての傾向が表れています。こうしたことから、今後も需給バランスは以前に比べるとだぶつく可能性が高いということが想定されます。

生産コスト上のリスク

 石油会社はシンプルに言うと、生産コストと販売コストのギャップで利益を得ます。シェールオイルの生産コストは年々下がり続けています。現在の生産コストは諸説ありますが、40ドルから70ドルともいわれます。

 

 つまり、原油価格が上がれば上がるほど生産コストに見合う油井が増え、生産量が回復するという構図になっています。これは長期に渡って石油価格の上値が抑えられることを意味します。

 

 「アラブの春」のような地政学的なリスクがそれを上回らない限り、原油価格はしばらくは極端に上振れる要素は少ないということです。

 

 さて、こうしたことを踏まえて石油株の見通しということでご質問を紹介します。

石油株の今後と見通しはどうなりますか

はじめまして。

 いつも大変参考にさせていただいております。アメリカの石油大手の株についてご質問させてください。エクソンやシェブロンなどは配当も高く、ETFにもたくさん組み込まれています。


 ただ、最近は原油価格も低迷しておりますし、ノルウェーの政府系ファンドも石油外しを発表しました。将来的には原油の使用が減っていったり、環境問題などでそれらの企業の業績は下がっていくのでは?と思っております。そうすると配当も下がるのかなと。


 たぱぞうさまはこれらについてどうお考えかご回答いただければ幸いです。よろしくお願いします。

石油株の減配、減益見通しは無くはない

 おっしゃるように、現在の状況はなかなか厳しいものがありますね。基本的にはどの石油会社も成熟株であり、劇的な売り上げの増加や利益の増加が見込めるわけではありません。売り上げがピーク時から半減しているところもあります。

 

 また、配当性向が100%を超えることもありますし、営業利益率や純利益率も実はさほど高くありません。

 

 完全に原油市況に振り回されているのが原油株各社です。そういう意味では、永続的な保有を目指して買う銘柄というよりは、原油市況をにらみながらうねりを取りに行くような、そういう銘柄になりつつあります。

 

 原油価格をみても、20世紀のような比較的安定した値動きではないことが確認できます。リーマンショック前後では非常にボラタイルな市場が続いていますね。

 

 また、おっしゃるようにESG投資の流れに伴う資金の引き上げも予想されるところです。

 

石油株の動向に大きな影響を与える原油価格

石油株の動向に大きな影響を与える原油価格

 こういうネガティブな状況を受けて、株価も低迷していますね。高値更新をする銘柄の多い中、石油株は割安水準に置かれています。

 

 しかし、真の意味で「割安」と感じるか、「割高」と感じるか、難しいところですが全ては原油価格次第と言えるかもしれませんね。

 

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