VFコーポレーション(VFC)の企業再生術は卓越している
VFコーポレーション(VFC)の株価が2016年秋口あたりから急落しています。VFコーポレーションはアメリカを代表するアパレルメーカーです。ノースフェース、イーグルクリーク、VANS、イーストパック、ティンバーランドなど多数のブランドを抱えます。
この中でもメジャーなのはノースフェース、それからVANSでしょう。VFコーポレーションは、停滞気味のブランドを買収し、経営改革・ブランド価値向上を図って再生することに長けています。このごろではティンバーランドを買収しました。
最も有名な傘下ブランドのノースフェースで1990年代、VANSで2000年代の買収です。
イーグルクリークというバッグブランド
傘下にイーグルクリークというバッグブランドがあります。イーグルクリークはこだわりのあるバックメーカーで、旅行に特化したバッグを作っていました。世界を旅行するバックパッカーは、登山バッグを代用している人が多くいました。
そんな中、イーグルクリークは数少ないバックパッカー向けのバッグを作っているメーカーでした。登山バックは荷物の入り口を紐で絞るようにできていることが多いです。そのため、鍵を取り付けるのに適していない場合があります。
しかし、イーグルクリークのバッグは1か所、2か所に南京錠のようなものをつければ鍵がしっかりかけられるタイプのソフトバックを売っていました。ファスナーに施錠できるタイプのバッグパックですね。
登山者は多くいますが、バックパッカーはそんなにたくさんはいません。だからパッカー用のカバンが少なかったのだと思います。
そのため、軟弱バッグパッカーだった私は、このタイプのソフトバックを非常に重宝しました。安宿で一応でもカギがかけられれば、とりあえず安心だからです。ただ、そのころのイーグルクリークはデザインが武骨で、売れ筋とはなりにくいものでした。
それが、VFコーポレーションに買収されたら大きくデザインが変わりました。そして、VFコーポレーションの販路を生かして日本でもよく見るブランドになりました。私が買ったときはなかなか小売店に置いておらず、直販かアマゾンぐらいでしか買えませんでした。大変貌を遂げたと言って良いでしょう。
VFコーポレーションと上位ブランドとの関係
ただし、VFコーポレーションは業界での上位ブランドというものを持ちません。たとえば、最も有名なアウトドアのノースフェースであれば、パタゴニアやアークテリクスといったブランドよりは、基本的にもう少しチープな路線です。
スニーカーならばVANSもそうでしょう。ナイキやコンバース、オニツカなどとは狙っているところが違います。
つまり、売れ筋を捉えるのは強いのですが、ブランド力という意味では各メーカーとも上位に他ブランドがあるという特徴があります。逆に、だから売れ筋とも言えますが、利益率は上位ブランドのほうが高そうです。ブランドという付加価値がよりあるからです。
アンダーアーマー(UAA)の苦境
アンダーアーマー(UAA)はもともとは、コンプレッションと言って筋肉に圧をかけることでパフォーマンス向上を目指す、アンダーウェアに強みを持っていました。シンプルなデザインと体のラインをきれいに見せるアンダーアーマー(UAA)のコンプレッションは、大流行しました。
ナイキやアディダス、プーマ、アシックスと言った世界のスポーツウェア4強はコンプレッションを積極的に出していませんでした。アンダーはありましたが、汗を吸収して乾燥させるという発想のものが殆どでした。
しかし、今となってはスポーツウェア4強もコンプレッションを作り、さらにはスキンズなど強力なライバルもあることから、風向きが変わってきています。アンダーアーマーも良いですが、スキンズは価格が高いだけ非常に良いです。スキンズを履いてマラソンを走ると筋肉痛になりにくい、それぐらい効果があります。
コンプレッションというシェアを食いつくしたと見ることもできるでしょう。一般的なスポーツカジュアルであるウィンドブレーカーやジャージ、靴などにも進出していますが、スポーツウェア4強の牙城を崩すには至っていません。
アンダーアーマー(UAA)はアンダーウェアのブランド力は一定の力を持ちつつも、売上自体は落ち着いてきつつある印象を受けます。
アパレル業界に経済的な濠(ワイドモート)は存在しにくいのは知っておくべき
上位ブランドであれば、ワイドモートが存在します。ただし、VFコーポレーションやアンダーアーマーといった比較的私たちにも買いやすいブランドには、それはほとんど無いと思って良いでしょう。
それにもかかわらずこの2社が躍進し続けてきたのは、VFコーポレーションのブランド再生力、アンダーアーマーのアンダーウェアコンプレッションというニッチへの新規開拓力が功を奏したことによります。
常にユーザーの新しい傾向を掴み、ブランド力を保ち続けるのは簡単なことではありません。この2社は、昨今株価が低迷しています。このまま低迷してしまうのか、それとも経済的な濠を再び作り、業界において優位な立場を築くのか、注目しています。
可能性を信じるならば買い、他のブランドと同じく埋没してしまうのならば見送りということになるでしょう。ただし、一般的な、カジュアルアパレルは移り変わりの激しい、経済的な濠の存在しにくい業界であることは知っておきたいところです。
VFC、UAA、VOOの10年チャート
VFコーポレーションとアンダーアーマー、S&P500連動ETFであるVOOのチャートです。
アンダーアーマーは成長株らしいボラティリティの大きさを示しています。VFコーポレーションは、かつては優良株らしく大きくVOOを上回っていました。このところの低迷を受けて、かなりVOOに接近してきています。
これを見て、何を思うかということです。
業績不振銘柄はのちのち買いごろであるという見方もできます。
VFコーポレーションの記事です。
安定感抜群、指標となるS&P500連動ETFです。