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TOPIXバリュー指数急上昇とPBR1倍割れ継続の企業

東証TOPIXバリュー株指数急上昇の背景

 東証TOPIXバリュー指数(以下:TOPIXバリュー指数)が、2023年に入ってから急上昇しています。

東証TOPIXバリュー指数

東証TOPIXバリュー指数

出典:JPX website

 バリューとグロースという言葉はなじみがある方が多いと思います。明確な定義は使う人によって異なりますが、それぞれの銘柄の分類に使われることが多い指標の一つがPBRです。


 PBRは「株価純資産倍率」のことで株価÷1株あたり純資産で求められます。

 

 TOPIXはよく知られるように東証株価指数です。TOPIXバリュー指数を構成する銘柄は以下のようなルールで選定されます。

  1. TOPIXに採用されている銘柄をTOPIX500とTOPIX smallに区分する。これは年1回の区分分けがあり、すでに決められている。流動性と浮動株ベースの時価総額を考慮されて区分分けされ、上位がTOPIX500に、それ以外をsmallに分類。
  2. TOPIX500とTOPIX smallをそれぞれ連結PBRで浮動株時価総額を3分割し、下位3分の1をバリューに区分。
  3. 連結PBR中位3分の1に区分された銘柄の時価総額半分をバリューに区分。

 

TOPIXのバリューとグロース

TOPIXのバリューとグロース

出典: 東証指数算出要領 (TOPIX スタイルインデックスシリーズ編)

 足元でTOPIXバリュー指数が非常に好調だということは、低PBR銘柄が買われているということです。

 

 2022年4月の東証市場再編後、

  • TOPIX=東証プライム上場銘柄で構成

 ではありません。そのため、あくまでも参考でしかないですが、日本経済新聞によると2023年2月時点で東証プライム全銘柄のPBRは1.19倍です。

東証プライム全銘柄のPBRは高いのか、低いのか

 これが高いのか低いのか。

 米国株と比較してみます。S&P500採用企業のPBRは2023年2月現在で約4倍です。つまり東証プライム市場上場銘柄のPBRは低いと言っていいでしょう。

 

 試しに、大型株で構成されるTOPIX100採用銘柄についてPBRを調べてみました。1/3ぐらいの企業がPBR1倍割れでした。範囲を広げるとPBR1倍割れ企業は非常にたくさんあります。

TOPIX100銘柄、PBR1倍割れの意味

 PBRが1倍割れということは、株価が1株あたり純資産よりも低い状態です。

 

 株主には株主総会の決議に参加できる権利である議決権や配当金を受け取る権利などさまざまな権利がありますが、その中の一つに「残余財産分配請求権」があります。

 

 これは、もし会社が解散したとき、会社にある財産は株主に分配され、これを受け取ることができる権利です。残余財産とは、純資産のことです。

 

 株価が500円で1株あたり純資産が1,000円ならPBR=0.5倍です。この銘柄は解散したら1,000円を受け取れる会社の株を500円で買うことができるということになります。会社経営を辞めて解散し、株主に純資産を配ったほうがいいというわけです。ですからPBR1倍割れは特に割安といわれます。


 実際に上場企業が解散して財産を株主に分配するということは非常にレアです。そのため、「解散したら純資産の額を株主が分配してもらえる」ということ自体にリアリティはほとんどありません。ある意味では実態に乖離したロジックと言えます。

PBR1倍割れを発行体が放置できなくなるかもしれない

 上記の理由から、PBR1倍割れを放置して、株式を発行している企業側が困ることはほとんどありませんでした。しかし、放置しておけなくなるかもしれない変化が起きようとしています。


 東証が2023年春に資本コストや株価を意識した経営の促進に向けて、要請しようとしていることがあります。これは、プライム市場・スタンダード市場の全社が対象です。


 「PBR1倍割れの状態については、投資家に対してその要因を示し、改善案を提示しなさい」という方針です。現時点ではまだ「案」にすぎず、決定したわけではありません。

資本コストや株価を意識した経営は実現するか

資本コストや株価を意識した経営は実現するか

出典; JPX website

 証券取引所にとって上場企業はお客様ですが、そのお客様に対して「低PBRを放置せず、上げる努力をしてください」とアナウンスしているということですね。


 PBR1倍割れなら、ある意味上場していないほうが株主にとっては幸せとも言えます。
上場企業たるもの、株主にはきちんと報いましょうと東証は提唱しようとしているわけです。


 東証のこの方針を受けて、低PBR銘柄は企業側の努力が入るであろうと想定した投資家が先回りして低PBR銘柄に資金を向けています。それがTOPIXバリュー指数急上昇の背景となります。

株式投資の基礎基本、PBRを上げるには?

 Pである株価を上昇させるか、Bである純資産を下げるか、あるいは両方が成立すればPBRは上昇します。

 

 株価はマーケットが決める要素が大きく、株式の発行体側が制御できるものではありません。できることは、利益を増やすことです。そういう見込みが立っている銘柄はマーケットで買われます。

 

 一方、発行体自身ができることもあります。その一つが自社株買いです。自己株式は純資産から差し引きますから、マーケットから自社株を買うことで、純資産を下げることができます。

 

 PBR1倍割れ銘柄を物色するのであれば、自社株買い余力を考慮するのが一つの手です。現預金が潤沢にあるような企業はその可能性が高くなります。


 また、ちょくちょく自社株買いをしている企業は、その効果を理解している傾向があります。そのため、今後も自社株買いを発表する可能性が大いにあるでしょう。

 

 ちなみに、PBRだけでなく、PERも米国株のほうが高いです。これは、株主にとって支持できる、成熟した仕組みがあるからとも言えます。投資環境が整っているのです。

 

 時々単純にPERなどの比較で本邦株式が割安、爆上がりするという議論が見られます。投資歴の長い投資家にとっては、すでに見てきた景色です。単純な数字の比較に全く意味がないことは、体験的に私たちは知悉していると言ってよいでしょう。

 

 しかし、東証が先導して日本の株式市場の後進性を是正できるならば、それは私たち投資家にとっても望ましいことと言えます。

 

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