ジム・クレイマー氏が2013年に提唱したのが”FANG”
米国株投資においてジム・クレイマー氏が2013年に提唱したのが”FANG”です。
5社は今はメタと社名を変えたフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルのことです。
英語の”fang”は牙のことです。ジム・クレイマー氏は弱気相場を意味する英語のベア、つまり熊に噛みつく牙になる可能性がある銘柄群との意味を込めたそうです。
2017年にアップルが加わり、”FAANG”になりました。これらの株価が特に2020年3月のコロナショック以降、破竹の勢いで上昇したのは記憶に新しいところです。
一方、2022年に入ってからは、金融引き締めフェーズで株価が高すぎると判断され、軟調に推移しています。
バンク・オブ・アメリカの富裕層向けビジネスにおけるFAANG2.0の提唱
2022年2月に登場したのが”FAANG2.0”です。バンク・オブ・アメリカの富裕層向けビジネスにおいて、投資戦略を提供しているジョセフ・クィンラン氏とローレン・サンフィリッポ氏が提唱したものです。
こちらは具体的な銘柄ではなく、産業の頭文字です。
Fは燃料を表すFuels。
一つ目のAは航空・防衛を表すAerospace and defense。
二つ目のAは農業を表すAgriculture。
Nは原子力と再生可能エネルギーを表すNuclear and renewables。
Gは金・金属・鉱物資源を表すGold, metals,minerals です。
2022年2月下旬以降のロシアのウクライナ侵攻によって、「戦争と高インフレとエネルギー転換」がクローズアップされました。FAANG2.0はこの変化を背景に想定されたものです。元祖FAANGはハイテク企業の集まりでしたが、FAANG2.0は全く性格が違います。
クィンラン氏とサンフィリッポ氏はFAANG2.0について「世界が深く変化していることを象徴している」と表現しています。世界の変化の例として、次の点を挙げています。
- エネルギー安全保障は今やほとんどの政府の最優先事項であること
- 世界の防衛費は2021年に初めて2兆ドルを突破し、増加に向かっていること
- 世界の食料価格は過去最高を記録していること
- 原子力は復活の態勢に入っていること
- 電気自動車の需要が急増し続けていること
- 金は現在、地政学のおかげで中央銀行の優先資産であること
- 資源/食料ナショナリズムが急上昇していること。
実際、元祖のFAANGと比較して、株価に大きな差が既に生まれているとも指摘しています。2022年初頭を100としたときの推移は元祖が80以下であるのに対し、FAANG2.0 は120を超えています。
ちなみに、クィンラン氏とサンフィリッポ氏は、FAANG2.0の構成銘柄を公開してはいません。
FAANG2.0と燃料、農業、原子力、再生可能エネルギ―
出典: FORTUNE.com
5つの分野の見通しに関して考察すると、それなりの裏付けがあります。2022年4月、世界銀行は”Commodity Markets Outlook”で、「2024年末まで歴史的な高水準で物価高が続く」との見通しを示しました。
この見通しではFAANG2.0の燃料、農業、原子力と再生可能エネルギ―に言及しています。ウクライナでの戦争の影響については特別な分析をしており、少なくとも2つの理由で、影響が長期化する可能性があると指摘しています。
一つ目は総じて全ての燃料の価格が上昇しているため、化石燃料を選択する余地が限られていることです。原油や石炭などの化石燃料を使い続けることがコスト的に難しいということですね。
二つ目は、一部の商品の価格の上昇が、他の商品の価格上昇を引き起こしていることです。たとえば、天然ガスの価格の高騰により肥料の価格が上昇し、結果として農産物の価格の上昇圧力となっていることが挙げられます。
航空・防衛は防衛費の変化で確認しましょう。世界の防衛費も上昇し続けて来ました。ウクライナでの戦争は各国の国防意識を高めるきっかけになっており、今後も世界全体での防衛費用は上昇が見込まれています。
出典:防衛省 令和3年度版防衛白書
金・金属・鉱物資源に関しては、金価格が上昇していることがその象徴と言えます。
現在世界が置かれた状況を考慮して、次の株式投資テーマをFAANG2.0と表現することの妥当性が確認できました。
戦争が長引き、株式市場が不安定であれば、FAANG2.0関連株への注目が一過性ではない可能性があるでしょう。つまりFAANG2.0は息の長い投資テーマになる可能性があるかも知れません。
FAANG2.0の基礎知識でした。次回は、米国株投資に落とし込むヒントについてお伝えします。
関連記事です。
毎年恒例、AUMのランキングですね。
昨今耳にするリースバックについてです。
利回りを下げる、借り換えスキームです。