たぱぞうの米国株投資

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ESG投資のお話をコムジェストさんに聞いてきました。

ESG投資とは?

 ESG投資は世界のトレンドになりつつあります。収益重視の個人投資家として趨勢を見ていると、ESGのテーマ性がイマイチ訴求しないところもあるかもしれません。しかし、知っておいて損はない流れだと思いますので取り上げてみます。

 

 今回、フランス系の投資運用会社であるコムジェストさんにお声掛けいただき、お話を聞いてきました。偶然なことに、私の海外駐在時代の友人が某ESG格付け会社で勤務しており、彼の話も交えて雑感を記したいと思います。

 

 ちなみに、日本の場合は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のGが弱いと言われます。コーポレートガバナンスコードですね。これは、株式投資をしていても実感されるところです。

 

 増資に伴うワラントの発行、不祥事なども、基本は同じなのです。誠実な経営、よりよい投資環境が実現すると良いですね。

ESG投資の種類と考え方

 まず、投資運用の目線からESG投資の種類について記しておきます。大和住銀投信投資顧問さんの資料がまとまっていますので、引用します。

 

 タイプとしては、以下の7つに分類されますが、ざっくりネガティブスクリーニングとESGインテグレーション、エンゲージメント・議決権行使を押さえておけば良いでしょう。

ESG投資の種類と投資運用額

ESG投資の種類と投資運用額

ネガテイブスクリーニングとは

 社会的・環境的・倫理的な価値観に基づいて特定の業種や企業を投資対象から外す、つまりスクリーニングすることを指します。

  • タバコやアルコールは健康上課題がある
  • 軍事は人を傷つける
  • アダルトはダメ

  こういったことがまず浮かぶかもしれません。これらは、倫理的な側面が強いかもしれませんね。

 

 しかし、もっとも意識されるのはカーボンリスク、つまり二酸化炭素排出に関わるリスクですね。対象となる事業が多いからです。

 

 京都議定書の流れに沿った、パリ協定に基づくカーボンリスクへのエクスポージャーをどれだけ避けることができるかということになります。

 

 そうなると、石炭・石油産業といったマイニング産業、さらにはそれら化石燃料を使うユーティリティ産業、例えば電力さらに鉄鋼業、重電、化学も関わります。広い意味では自動車や航空産業もそうですね。

 

 自動車産業が電気自動車にシフトしつつあるのはそういうことです。ヨーロッパや中国は世界に先駆けてカーボンに関する厳しい規制を設けています。今や中国は日本よりも厳しい規制です。パリ協定の内容を政策へ反映させているわけですね。

 

 日本の場合は、今までの技術の遺産が大きく、エネルギーの置き換えも含めて非常に対応が難しいです。自動車エンジンもそうですし、火力や原子力発電所もそうですね。そういう意味では、そういったレガシーの少ない国は切り替えがしやすいです。

 

 例えば原子力発電所は東日本大震災以来、建設コストが莫大になっています。保険も含めて安全管理のための費用が激増したからです。世界での新造原子力発電所は激減しましたね。コストとリスクに収益性が合わないからです。

 

 当然造った後の運用コストも以前より増えています。すでにESG投資の文脈だけでは語れないほどのリスクを背負っているわけですが、エネルギーの切り替えは容易ではありません。ちなみに、世界の発電は、再生、分散という方向になっています。

 

 また、車も劇的な変化が見込まれます。部品点数がまるで違いますし、エンジン技術の援用に限りがあります。つまり、新規参入の余地が生まれるということです。

 

 世界の車がモーター駆動、発電が再生エネルギーに舵を切り、さらなる先端技術が生み出される環境が整うと世界の勢力図が変わる可能性があります。過去の技術の優位性にこだわると、このジャンルで後進国化する可能性を秘めているということです。

 

 ESGにそぐわない企業、あるいは国に投資しない、インベストの逆のダイベストという流れになりかねないというわけですね。これら含めて「リスク」というわけです。

ESGインテグレーション

 ESGインテグレーションというのは運用プロセスにESG分析・調査を体系的に組み込んだ投資のことを指します。

 

 たとえば、カーボン関連の自動車産業だけど、電気自動車を増やして再生エネルギーへの舵を切っているな、企業努力しているな、そういうところでポジティブに評価していくということです。


 換言するとESGのエッセンスが入っているかどうか、それで評価していく方法ですね。全ての産業をESGの観点から外れるということで排除するのではなく、管理できているか、制御できているか、そういう視点で積極的に努力を評価していくということです。

 

 年金運用などのアセットオーナーはこちらのほうが多いという話ですね。投資額が大きいから分散の視点でそうなるのでしょう。

 

 いずれにしても、会社の価値を出し続けることができるか判断していき、今ある財務情報だけではなく非財務、未財務の部分を定性的に判断して投資していくという視点です。

エンゲージメント・議決権行使

 エンゲージメント・議決権行使。これは読んで字の通りですね。株主になり、経営者側に議決権行使を活用しながらESGを意識した経営を伝えていくということですね。そういう意味では、PEファンドなどとはまた違う議決権行使の手法ということになります。

ESG投資はリスクを避け収益性を見る投資

 ESG投資は倫理に基づいて行う投資と思われがちです。そうではなく、こういったリスクを避けて、例えば5年後、10年後に収益をしっかり出せるかどうかを判断して行う投資です。ESGの要因はたくさんあります。

 

 それにそぐわない場合、将来的に収益性を毀損する可能性もあるわけですね。

 

 例えば、コスト削減のためにインドで工場を建てるとします。文化的な背景を踏まえて、ヒンズーを尊重してお祈りできるところを作ったり、牛由来の食べ物を避けたり、そういったことに配慮して工場建設を行います。これらは短期的にはコストですね。

 

 しかし、まったく彼らの文化的、あるいは生活習慣的なものを尊重せずに短期の収益性だけを見た場合、ストライキや暴動のリスクが高まります。そういった非財務、未財務の情報を織り込んだ運用が長期的には収益性が高い事業ということになります。

 

 ESG要因に基づくリスクを正しく評価し、企業収益に繋げていく、ESG投資というのはそういう考え方ということですね。

 

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