金利上昇中に米国大型株指数のアウトパフォームを追求するETF【EQRR】
米国では2021年秋ごろから金利の上昇が著しいです。
出典:三井住友銀行
2022年に入ってからの米国株式市場は、金利の変化に揺さぶられている感がありますね。
一方、金利の上昇が追い風になる金融商品もあります。
例えば以前当ブログでご紹介した“Inflation Beneficiaries ETF”、ティッカー【INFL】がその一例です。今日ご紹介するマニアックなETFも金利上昇の恩恵を受けることを謳うものです。
2017年から運用されている【EQRR】
米国Proshares社が運用する、”Proshares Equities for Rising Rates”は、「ファンドの目的」で、次のように謳っています。
“The goal of the fund is to provide relative outperformance, as compared to traditional U.S. large-cap indexes, such as the S&P 500®, during periods of rising U.S. Treasury interest rates.”
(ファンドのゴールは米国先の金利が上昇する期間にS&P500 のような伝統的米国大型株の指数と比較して相対的にアウトパフォームすることである)
とても分かりやすい説明ですね。
ティッカー【EQRR】は”Equity for Rising Rates”の略です。ティッカーだけを見ると馴染みませんが、ETFの正式名称を見ると「なるほど」と思わされます。
このETFがNASDAQに上場したのは2017年7月24日です。改めて米国10年債の利回りを確認すると、2017年は金利の上昇フェーズだったことがわかります。
当時このETFを組成した理由はその金利上昇の波にのっかろうということだったのでしょう。
出典:三井住友銀行
経費率は0.35%です。高いわけではないですが、低いわけでもないという水準です。
出典: Proshare社
EQRRのインデックスは金利に敏感な米国株を束ねたもの
ベースとなるインデックスはNasdaq omxが算出している” Nasdaq US Large Cap Equities for Rising Rates Index“です。Nasdaqという名前がありますが、上場している市場がNasdaqである必要はありません。こういう点は米国株式市場の柔軟性のようなものを感じます。
インデックスは2017年6月29日から算出されていますので、【EQRR】の運用開始とほぼ同時期です。
このインデックスは株価が金利の変動と比較的高い相関関係を示してきた米国株式で構成されています。普通株かREITが対象です。セクターは5つで構成銘柄は50です。
インデックスの見直しは原則として3の倍数月に実施されます。
セクターが5つのみですのでS&P500などと比較するとかなり偏りがある構成です。5つのセクターのウエイトには上限の目安があります。
出典:Nasdaq omx
実際の運用も、インデックスのウエイトルールに近い形になっていますね。
出典: Proshare社
EQRRとS&P500の比較チャート
バリューよりのセクターをカバーしています。そのため、近年の米国のハイテク企業の株価上昇の恩恵は受けていません。5年のチャートをS&P500と比較すると、やはりS&P500には大幅に劣後しています。
出典: US版 Yahoo Finance
しかし、チャートの期間を3ヶ月にすると、見え方が全く違います。2022年に入ってからはセクター選別効果がはっきり見えているということでしょう。
出典: US版 Yahoo Finance
EQRRの構成銘柄は独特の偏りがある
構成銘柄を見てもやはりかなり個性的です。
出典: Proshare社
特徴的な銘柄がありますね。少し触れておきます。エネルギー系企業が多いです。
【OXY】オキシデンシャル・ペトロリウム
米国の石油とガスの探鉱・生産会社です。NYSEに上場するS&P500採用企業です。
【SLB】シュルンベルジェ
石油・天然ガス開発にかかわる技術、プロジェクト管理、ITサービスを世界的に展開する企業です。NYSEに上場するS&P500採用企業です。
【DVN】デボン・エナジー
米国オクラホマ州に本社を置く独立系エネルギー企業です。NYSEに上場するS&P500採用企業です。
今後しばしの米国債利回りの動向を考慮すると魅力あるETFですが、残念ながらオンライン証券大手3社の取り扱いがありません。
金利上昇に強いセクターが何かを知る上では手掛かりになりますね。
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