アラフィフでの早期リタイアが続々増えている
50歳を境に早期リタイアされる方が増えている印象があります。印象があります、というのは私の実感だからです。統計的に何かを参照したわけではありません。しかし、友人知人が毎年のようにFIREを実現しているのを目にすると、時代は変わったなぁと思いますね。
だいたい40代から50歳にかけて、職場における役割が管理的なものになることが少なくありません。その過程で仕事が重くつまらなく感じ始めるのかもしれません。先が見えるということもあるでしょう。
また、投資が一般的なものになりつつある中で、年数をかけてコツコツ資産を増やしてきた人にとってはゴールが見えてくるのも事実です。
特に以下の条件が当てはまる人はFIREは非常に現実的なものになっています。
- 節約ができる
- 投資ができる
- 共働きなどインカムに恵まれている
私の知り合いでも、配偶者は仕事が好きで継続、自分はFIREというケースがいくつもあります。夫婦でFIREというケースもあります。仕事が人生のすべてであるという人もいれば、一部であるという人もいます。
いずれにしても、自分の人生は自分で決めるのが大事ですね。さて、今回はやや大きめの住宅ローンを抱える方からのご相談です。
金融資産2.3億円・ローン8000万円──49歳夫婦の早期リタイア
たぱぞう様はじめまして ふくろうと申します。
早期リタイア可能かどうかについてご相談をしたく、メールさせていただきました。
また、早期リタイアする場合には、どの資産から取り崩すのがベターかについてもご相談させていただければと思います。
家族構成
夫 49歳 正社員(退職金なし)
妻 43歳 無職
都内の賃貸マンションに居住中
新築マンションを購入し、来年入居予定
住宅ローンは8000万円(返済期間29年)借入予定
ローン以外の残代金や諸費用等を現金や投資信託を取り崩して支払う予定です。
以下資産額は、決済後に残る予定の金額です。
世帯の預貯金、株等資産の評価額 23,000万円
【資産の内訳】
現預金 1,300万円
日本株 1,600万円
米国株 6,600万円
投資信託 2,700万円
米国債券(ゼロクーポン 償還まで約25年)1,200万円
イデコ(先進国株) 1,000万円
仮想通貨 8,000万円
区分マンション 1,600万円(2012年購入価格、賃貸中、年間賃料132万円、借入なし)
引っ越し後の年間生活費 750万円
【内訳】
ローン返済 276万円
住宅維持費(管理費、修繕積立金、固定資産税等)80万円
その他生活費、娯楽費(旅行など)、医療費、など400万円
以上、よろしくお願いいたします。
贅沢をしなければ保守的に見積もっても十分FIREは可能
資産と支出構造を拝見する限り、早期リタイアは十分に現実的です。取り崩しの順序と住宅ローンの扱いに注意することで、より安定したリタイア生活になります。

まず、リタイア可否の試算からです。ご夫婦の年間支出は約750万円。単純にかなり保守的に利回り3%の運用を想定すると、必要元本は約2億5,000万円です。なお、個人的には名目では昨今10%のリターンを見込んでいます。インフレの後押しがあるからですね。
現在の総資産は2億3,000万円であり、ほぼ到達圏内にあります。したがって、働かなくても理論上は生活が維持可能な水準です。しかも、仮想通貨8,000万円という高リスク資産が全体の約35%を占めています。
ここを一部利益確定しつつ、生活防衛資金に回すだけでもリスク調整後の実質安全域が広がります。
次に、住宅ローン8000万円についてです。この年齢でフルローンは心理的負担が大きく見えますが、低金利環境では必ずしも悪ではありません。ご存じの通り、米国とは違い日本は利上げはそう簡単ではありません。
資産運用リターンが金利を上回る限り、ローンを残す選択も合理的です。特に、米国株や投信をそのまま保有しながら、ローン金利(1〜1.5%程度)との差で資産を増やす構図は、今の基本戦略です。私も不動産賃貸業でローンをしています。
ただし、リタイア後に収入証明がなくなると借換えや追加融資が難しくなります。そのため、リタイアは融資実行後かつ安定返済実績が数か月ついてからが安全です。
次に重要なのが、取り崩しの順序です。
- まずは現預金1300万円+日本株1600万円。税負担が軽く、流動性が高いものから。
- 次に投資信託2700万円と米国株6600万円の配当・分配金を活用。長期成長を損なわないよう、一括売却よりも毎年リバランス感覚で行うと良いでしょう。
- 米国債ゼロクーポン1200万円は25年後の保険資産扱いで良いでしょう。老後後半の備えとして残します。
- iDeCo1000万円は60歳以降の年金枠として温存しておきます。これは制度上そうなりますね。
- 仮想通貨8000万円は最もボラティリティが高いです。保守的に考えるならば半分を現金化し、生活費の10年分(約7500万円)を確保するという考えもあるでしょう。ただ、私ならば保有しておきます。雑所得の税制は、退職者には有利に働くからです。
仮想通貨の売却益は雑所得扱いで、累進課税の対象です。ただし、退職や無職の状態では給与所得がないため、所得税率が低下します。このため、現役時よりも税率が下がり、結果的に売却タイミングとして有利に働きます。
たとえば課税所得が330万円以下であれば税率は分離課税の20%以下に抑えられます。つまり、早期リタイア後に売却するほうが、税コストを抑えつつ生活資金を確保できるという点で、理にかなっています。
区分マンション(年間賃料132万円)はモノによりますがストレスが無いならば、そのまま保有でもよいでしょう。不労所得として毎年の支出を2か月分程度軽減しますね。
そして最後に、リタイア後の設計です。
生活費750万円に対して、家賃収入132万円+配当等200万円前後が入れば、取り崩し額は年間400万円台に抑えられます。
仮に運用利回りを3%、インフレを2%と仮定しても、25年以上は資産を維持できる計算です。もし65歳時点で資産が1.5億円以上残れば、iDeCoと年金受給を合わせて十分な余裕が生まれます。
取り崩しの優先順位は税と流動性で決め、日本株を先に、米国株と債券、仮想通貨は後で良いかと思います。
同じぐらいの資産規模でFIREされている方は大勢います。これからは、健康と時間に軸足を移した生活になりますね。
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