たぱぞうの米国株投資

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現在の金融行政への反対意見を紹介します。

顧客本位の金融行政

 森信親氏が金融庁長官になってから、顧客本位の金融商品ということが改めて問われています。製造業などでは命にかかわる場合もあるのである意味当たり前の発想なのですが、金融業界では意外に顧客の無知に付け込むようなダメな商品があり、行政が手入れをしているという構図が一部に見られます。

 

 そのため、劇的な変化をもたらした金融庁の姿勢は多くの個人投資家がうれしく思っていました。もっとも、私の場合は早々に国内商品に見切りをつけて米国市場での買い付けをしているので、ある意味では蚊帳の外です。

 

 しかし、このところのつみたてNISAや管轄は違いますが個人型確定拠出年金といった長期投資の視点に立った、本当に良い商品が評価される制度は良いと感じており、日本市場に一部資金を戻しても良いとさえ感じ始めています。

 

 しかし、どんな業界でも劇的な変化というのは反対側からのご意見がつきものであり、今回もTwitterで目にしましたので、公平さという意味でもここで改めてご紹介したいと思います。

金融行政の強烈な違和感とは

金融行政の強烈な違和感 金融庁は本当に「個人投資家の味方」なのか? | ZUU online

 「或る銀行員の独白」というペンネーム?で連載をされています。普段は読み応えある、銀行の内情について記したものが多いのです。今回は7月に森長官の再任が決まったということで、内部関係者の偽らざる心情が吐露されています。

 

 部分引用をします。

 金融庁は、ご丁寧にも「初心者が安心して資産形成を始められる」お墨付きの投資信託まで選定してくださっている。

 

すなわち、アクティブ型株式投信5本、インデックス型株式投信50本弱である。投資家にしてみればお節介も良いところだろうが、これは「銀行にはまともな投信なんてありませんよ」と言われたに等しい。

 

 お墨付き投信といっても、金融庁が元本保証をしてくれるわけでもないのにである。

 たしかにその通りで、投信を絞り込んだということはかなり踏み込んだ、勇気ある試みだと思います。株式というのはそもそも上下動がつきものですから、永遠に上がり続けることはありません。

 

 それでもこれだけ強気にお墨付き指数を示したのは、やはり20年という長期スパンだからでしょう。ただし、この金融庁の示した条件だとやはり「銀行にはまともな投信が無い」ということになってしまうのでしょうか。

 

 低コストの投信を顧客に販売すると利益が上がらない構造に銀行がなっているとするならば、銀行の特にリテールにおける業態そのものが持続可能かどうか問われる時代になっているということだと思いました。

販売担当者に還元される収益とは

 金融庁の指導のもと、銀行窓口で販売される貯蓄性の高い「外貨建保険」などで販売手数料の開示が行われることになった。

 

 また、銀行が保険商品を販売するためには顧客ニーズをヒアリングするためのアンケートが必要になり、購入手続きが煩雑になった。販売担当者に還元される収益も大きく減少し、保険商品はさっぱり売れなくなったのである。

 

 投資信託の販売においても、まさに同じことが起こりつつあるのだ。

 手数料の大きさを開示したら、売れなくなったという話です。販売担当者に還元される収益が今まで大きすぎ、それに気づいた顧客が逃げ始めているということですね。

 

 非常に考えさせられます。もしかすると、これはいわゆる銀行業務の大幅な縮小、時代の移ろいとともに産業構造が変化しつつある、1つの表れなのかもしれません。

 

 インターネットが世間に広く膾炙したのが1995年と言われます。じつにそれから22年たって、ようやく顧客にとって有益な商品を誰もが選択できる時代を迎えつつあります。

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 今まではネットを駆使できる、一部の事情通だけがそうした商品を選んできたように思います。

 

 つみたてNISAが導入されると聞いた時にはこれほどの影響を予想できなかったのですが、度々金融庁イベントに参加するうちにその影響の大きさに気づき始めています。金融庁が個人の資産運用に資する商品を明確に示した意味は大きいです。

 

 皮肉にも金融商品改革は私たちユーザー、あるいは販売者からの変革ではなく、行政という上からのお達しだったわけです。複雑な外貨預金、手数料の見えない貯蓄型保険、元本を切り崩すタコ足配当の投信、こういった商品がかつてない勢いで減少し始める嚆矢になるのかもしれません。

富の分配はお上の仕事、増税ということ?

 投資信託の手数料云々という前に、投資しなくとも社会の富が誰にでも分配される仕組みを作ることこそ「お上の仕事」ではないのだろうか。

 

 それを放棄して「運用で自分の資産を形成しなさい」と言わんばかりの態度に、私は強烈な違和感を覚えるのだ。

 富の分配は税金で行うことになりますが、「お上の仕事」がこれ以上の増税を意味するならば、それはちょっとしんどいなぁと思います。私はあまり年金はあてにしていませんので、自分で運用しています。

 

 ただ、老齢年金が厳しいとしても、年金のもつ障害年金、遺族年金といった保険機能は非常に重要ですから、抜けようとは全く思いません。

 

 銀行の運用部門がもっと上手にやれれば良いのですが、それはやはり難しいのでしょうね。だからと言って、金融知識の少ない人から販売者が大きく利益を得るという構図はやはり持続可能なビジネスモデルとは思えません。

 

 個人的には親族には銀行員が多いので何やら複雑な心境ですけどね。

毎月分配型投信は必要か

 森長官の主張は正論である。しかし、その正論にすべてをあてはめることはあまりに乱暴ではないか。目の敵にされている毎月分配型投信でも、実際に利益を出している人はいるのだ。

 

 たとえ、元本の切り崩しだと分かっていても、10年後の資産形成よりも来月の分配金を重視する人だっているのだ。90歳の年金生活者にとって10年後の資産形成という言葉がどれほど空虚なものか想像できるだろうか。

 普通に預貯金を切り崩すか、分配金が欲しいならば毎月分配されるバンガードの債券系ETFとか買っておけば良い気がします。債券ETFはリスク低めですから妥当性があります。ただ、やはり買い方や税金が難しいのでしょう。

 

 しかしなぜ、そこで元本を取り崩して名目上の利回りを高く見せるような商品を90歳の人に勧めてしまうのでしょう。安定した分配金を年金のように欲しいという高齢者の行動バイアスに注目した、巧みな商品であることは間違いありません。

 

 つまり毎月分配をすることが問題なのではなく、多くの毎月分配型投信が元本を切り崩して高い手数料をとりつつ、利回りを高めに見せることが「エグイ」として問題になっているのですね。そのため、基準価格も分配金も右肩下がりのものが殆どです。いわゆる先細り投信です。

 

 そこが解決できる毎月分配型投信があれば、問題ないのでしょう。本当に自分や自分の家族に買ってほしい商品をおススメできるようならば、良いということですね。もちろん、弊ブログではそういう自分も買いたい良い商品を中心に話題にしていきたいと思っています。

 

 ちなみに私が買っているVTIやVYM、S&P500連動ETFも20年、30年、あるいは40年後を見ています。

 

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