賢明なる投資家、バリュー投資の最高傑作と言われる書籍
オマハの賢人ことウォーレン・バフェット氏には師にあたる人物がいます。その人がこの本の著者であるベンジャミン・グレアム氏(1894年~1976年)です。投資界における古典中の古典と言って良いでしょう。初版は1949年、何と昭和24年です。
ベンジャミン・グレアム氏は1929年の世界恐慌で痛手を負い、それから投資について研究に研究を重ねました。
世界恐慌時にすでにウォール街で知られた存在だったグレアム氏ですが、恐慌を経て「安全域」という厳密なリスク管理を行うようになります。リスクある投資を極力避け、バリュー投資をひたすらに追求した考えです。
そのグレアム氏のコロンビア大学ビジネススクール時代の教え子であるバフェット氏は、唯一グレアム氏からA+の評価をもらった生徒だといいます。
ちなみにバフェット氏はグレアム氏の教えを乞うためにコロンビア大学ビジネススクールに通いました。進学したらたまたまグレアム氏がいた、というわけではありません。
バフェット氏の父は証券会社を経営していましたが、その父に次ぐ影響を与えた人物としてグレアム氏を挙げています。事実、「投資法の85%はグレアムだ」と述べています。そのため、バフェット氏の主張にはグレアム氏に重なるところが多く見られます。
本書はデータが1970年代のものが多く、古いところもあります。しかしその主張は色あせることなく、今につながるバリュー投資の源泉をみることができます。
グレアム氏によって提案された、株式投資の正攻法
内容、文章がなかなか難解で、株式投資の初心者がいきなり読むには適さないかもしれません。しかし、その主張は明確です。例えば、
- 株式と債券の配分投資
- 割安株の見つけ方
- 投資と投機の違い
- 株価を気にしない、毎日チェックしない長期投資法
という内容です。
株価の変動の予測に力点を置き、チャート分析をして頻繁な売買を行うのが投機家、適切な価格で株式を取得し保有するのが投資家、と主張します。バリュー投資の傑作本と言われるゆえんです。
長期優良株投資の思考法ここにあり
ただ、文体が独特でちょっと読みにくいところがあります。訳本独特のくせもあります。また、1970年代の改訂本なので取り上げられている企業や市場データ、数字がその当時のものです。
当時から比べると社会、政治体制はもちろん産業構造もかなり変化しましたから、多少の想像力を働かせて読み進める必要があります。
しかしそうは言ってもバフェットに連なる投資思想、この本の本質的価値は損なわれるものではありません。多くの話題の投資本を読み、投資歴もある人には、今につながるバリュー投資、長期優良株投資の源泉に触れることのできる良書ということになります。