たぱぞうの米国株投資

米国株投資ブログ。某投資顧問のアドバイザー。メディア実績/日経マネー・ヴェリタス・CNBC・ザイなど

厚生年金料率引き上げと構造的問題

厚生年金料率引き上げは一応打ち止め

 2017年9月から厚生年金の料率が18.30%になりました。厚生年金保険料というのはこのようになっています。


 毎月の保険料額=標準報酬月額 × 保険料率

 賞与の保険料額=標準賞与額 × 保険料率

 

 これを事業主と被保険者が半分ずつ負担しています。保険料率の上昇はそのまま給与の減少ということになります。

 

 じわじわ上昇しており、この10年ちょっとでおよそ5%の値上げになっています。現役世代の負担を増やさないために一応これで打ち止めということですが、いずれまた改正法案が出されるのではないでしょうか。

 

 なぜなら、受給者は増え続け、負担者である被保険者は減り続けるからです。

 

 また、子ども保険料という名の社会保障が導入されれば、それもまた上乗せされることでしょう。子ども保険料の最大の問題は、負担する層が現役世代に限られることです。これは、被保険者と受給者が厳密に分けられていることに起因します。

 

 

 年金が将来どうなるのか、というのは私たち現役世代にとって非常に切実な話です。人によっては「支払われる可能性がないならば、もう払い込む必要は無いのではないか」という人もいます。

 

 私はリスクへの備えという意味で障害年金や遺族年金も含めた年金は必要であるというスタンスですが、今後のあり方にはやや不安を覚えます。

 

公的年金被保険者数の推移

f:id:tapazou:20170831073445p:plain

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/H27.pdf

 さて、公的年金被保険者の推移です。被保険者というのは、年金を払う側、負担する側の人です。20歳以上で国民年金の支払い義務が発生しますから、それ以上の年齢層です。ざっくりいうと、年金を払う側の人は減少傾向にあります。

 

 これは日本の労働人口が減っているからです。それとは逆に高齢層が増えていますから、日本の年金というのは支払う側が減り、受け取る側が増えるという構図になっています。年金の賦課方式というのはこういうことです。

 

 平成8年に被保険者数は国民年金と厚生・共済年金被保険者の重複を含んで7000万人を超えました。しばらく7000万人を超えていましたが、現在は6700万人、減少傾向です。今後移民でも受け入れない限り、増えることはありません。

 

 このアンバランスがピークに達するのが今の40代、つまり団塊ジュニア世代が受給者になるころです。第三次ベビーブームを作れなかったツケが老後に回ってくるわけです。

 

 今の30代・40代というのは受験は人数が多すぎて厳しく、就職は氷河期で厳しく、老後は年金実質減で厳しいという三重苦の世代になります。

1号2号3号被保険者とは?被保険者(年金を払う側)・種類別の意味。

 被保険者、つまり年金を払う側には1号2号3号とあります。これは、下記のような違いがあります。

 

国民年金第1号被保険者

 20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、または学生、無職の人が当てはまります。会社員や公務員のようないわゆる「やとわれ人」ではない立場の人が国民年金被保険者第1号になります。

 

国民年金第2号被保険者

 会社員や公務員のように厚生年金に加入している人を国民年金第2号被保険者と言います。厚生年金と同時に国民年金にも加入していますから、年金だけ見れば最も手厚い層です。65歳以上になり、受給権が生じると、第2号にはなりません。

 

国民年金第3号被保険者

 国民年金第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者のことを指します。扶養されている、ということが条件ですので年収が高いと外れます。その年収額は130万です。よくパートなどで言われる「130万の壁」というのはこれを根拠にしています。

 

 国民年金第3号被保険者の保険料は第1号、第2号の保険料でまかなわれます。第3号被保険者が支払う必要がありません。年収が130万円を超えますと、自分で支払う義務が生じます。だから、この枠内での年収に収めたいわけですね。

 

厚生年金の被保険者

 厚生年金は1号から4号の被保険者があります。1号は会社員、2号は国家公務員、3号は地方公務員、4号は私立学校教職員共済組合加入者です。これは、厚生年金と共済年金が一緒になったことの名残ですね。

 

 最も大きな層は、国民年金第2号であり、厚生年金第1号ということになります。いわゆる年金2階建ての層です。

年金受給者の推移

f:id:tapazou:20170831074134p:plain

 年金受給者の推移です。国民年金と厚生年金保険などを足すと7000万人を超えてきます。これは国民年金と厚生年金を重複して受給している人が多いからです。延べ人数ではなく、実数としては〔4025〕万人です。

 

 この5年の推移を見ても、老齢人口の増加と歩調を合わせて着実に増えています。平成27年には初の4000万人突破です。この5年で見ると、1年平均で50万人ずつ増えています。

持続可能な年金政策

 支払う側が減り、受け取る側が増える。このままいくと年金は減る一方です。持続可能な年金政策にするための対策は非常にシンプルです。

  1. 支給年齢を引き上げる
  2. 支給額を減らす
  3. 運用成績を上げる

「支給年齢を引き上げる」

 支給年齢を例えば70歳にして、定年も70歳にすれば労働人口が増えて、年金受給層は減ります。一挙両得の政策ということになります。ただ、一生のほとんどを仕事で終えることになりますから、多様な生き方とのバランスが求められます。

 

「支給額を減らす」

 支給額を減らすのは手っ取り早いです。しかし既得権である年金を減額するような政策をとると、選挙で負けます。受給者のマジョリティである高齢者は大票田だからです。

 

 そういう意味では是非はともかく、インフレを起こすというのが現実的です。国の金融政策も現在インフレを志向しています。

 

「年金運用成績を上げる」

 年金運用成績を上げれば年金資金が減るのを抑えられます。国内株式と債券を海外株式と債券に振り分ける比率を上げたほうが良いと個人的には思います。ただ、これも非常に政治的なので簡単ではないでしょう。

貯蓄から投資へ

 今まで私たちの老後の生活を担保してきた年金制度です。しかし、今の現役世代は年金にプラスして自助努力が求められそうです。自助努力というのは収入増です。例えば投資による運用だったり、副業というのがそれにあたるでしょう。もちろん本業が本流です。

 

 投資で言うならば金融庁はNISAという形でバックアップしています。厚労省は確定拠出年金という形でバックアップしています。これらを利用しない手はありません。「政策に逆らうな」というのは株式投資の格言ですが、広く投資全般に言えます。

 

 各企業の副業禁止規定はすでに時代遅れの束縛になっています。1人ひとりの持つ属人的な優れた能力を生かして活躍の場を広げ、逆に本業に還流させるような仕組みが理想と言えます。

 

 生産性の向上とはこういうことであり、ひたすら勤め先に滅私奉公を強いるという時代ではありません。年金政策上も労働集約的、時間集約的な前時代的勤務のカタチが時代遅れになりつつあると言えます。

 

 関連記事です

  年金運用に関しての記事です。現在日本国債は35%を占めています。非常に低利で回していることになります。株式の比重を高めたのはここ数年です。時期が遅すぎたように思えましたが、市場がさらに上昇して今のところ事なきを得ています。

www.americakabu.com

  豊かだった時代に比べてクルマや自宅といった大きな消費財への出費は止まりません。しかし、一方で収入が増えないので貯蓄も増えないという構図です。いかに支出を抑えて投資に回していくかでしょう。

www.americakabu.com

  こちらも厚労省の資料ですが、「人口高齢化を乗り越える社会モデル」というタイトルに私は大変共感を覚えます。人口高齢化は分かり切っているわけですから、今のうちに個人レベルでもできる手を打っておきたいです。組織は変えられなくても、自分はいつでも変えられるからです。

www.americakabu.com