たぱぞうの米国株投資

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為替ヘッジあり投資信託やETFのメリットデメリット

為替ヘッジありの投資信託、ETFが注目される背景

 2022年のマーケットを象徴する事象が対ドルでの円安です。一時32年ぶりの水準まで円安が進みました。


 2022年初は1ドル=115円前後でしたから、1ドル=140円としても約22%ドルが上昇したことになります。一時期は150円をこえ、実に30%の上昇でした。


 2021年までに米ドル建ての資産を持った方であれば、米国のマーケット環境が冴えない状況でも円安である程度相殺されている形になります。

 

 一方で米国のインフレがある程度収束すると、金利の上昇に歯止めがかかり、結果として2023年は2022年比で円高に振れると考える方もいますね。

 

 これからしばしの間資金を置く場所として考慮するものの一つが「為替ヘッジ付き」商品かもしれません。

為替ヘッジあり商品とは。コストと簡単なしくみ。

 ヘッジとは投資対象の価格変動に伴うリスクを低減することです。為替ヘッジといえば、為替変動のリスクを低減することになります。
 
 海外資産へ投資する投資信託やETFには、投資の対象が同じであっても「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」の両方が存在していることが少なくありません。

 

 この2つはプライスの動きが為替相場の影響を受けているかどうかの違いです。為替は、それぞれの国の異なる通貨と交換する取引レートのことです。外国株式や外国債券などを投資対象とする投資信託は、外国通貨を通じて投資を行っています。

 

 そのため、換金時に購入したときよりも円高になった場合、損失が発生します。この損失を「為替差損」といいます。

 

 この「為替差損」リスクを限定的にする行為が「為替ヘッジ」です。為替ヘッジは、将来交換する為替レートをあらかじめ予約する取引(為替先物予約)で実施します。その際に、対象通貨の金利差分の為替ヘッジコストが発生することがあります。

 

 この費用は投資家が直接的に支払うものではありませんが、信託財産から引かれるため、プライスにマイナスの影響を与えます。為替ヘッジのコストについても触れておきましょう。

 

 例えば、日本の投資家が米ドルの為替の影響を低減するために為替ヘッジを行なう場合、円は米ドルよりも短期金利が低いので、米ドルと円の金利差が為替ヘッジコストとなります。

 

 為替ヘッジコストが高いと、その分為替ヘッジ後の利回りは低くなり、為替ヘッジコストが低いと、高い利回りを享受しやすくなります。2022年は米国の金利が上昇していますから、ヘッジのコストも上昇していると考えるのが自然です。

 

 為替ヘッジの有無による違いについて簡単にまとめると、以下の表になります。

為替ヘッジあり、為替ヘッジなしの違い

為替ヘッジあり、為替ヘッジなしの違い

出典:各種資料によりたぱぞう作成

為替ヘッジあり商品を実際に比較してみる

 では、為替ヘッジあり、なし商品を比較してみましょう。


 例にするのは、iシェアーズ S&P500 米国株 ETFです。為替ヘッジありは2020年6月18日に設定された【2563】、なしは2017年9月27日に設定された【1655】です。【2563】が後から設定されています。


 この2つの2022年3月末の純資産は【1655】が【2563】を300億円以上上回っていたのですが、足元は逆転しています。

 

 6か月のチャートです。

1655と2563で為替ヘッジの影響を見てみる

1655と2563で為替ヘッジの影響を見てみる

出典: Nikkei.com


 ピンクが【1655】、紺色が【2563】で、売買高については【2563】を表示しています。9月以降、それまでより売買高が増えています。


 円安が大きく進んだことで、将来の円高を意識した投資家がの資金が入っていると考えられます。プライスの推移はおおむね【1655】の方が堅調ですが、昨今の円高に向いた局面では【2563】の変化のほうが大きいですね。

 

 外国株式を対象とした商品における為替ヘッジは、急激な円高局面ではそれなりに効果があると思います。よって、現在の水準より円高が気になるのなら、選択肢になりうる商品でしょう。

 

 次に債券対象商品における為替ヘッジを考察してみます。


 日興アセットマネジメントが運用する上場インデックスファンド米国債券に為替ヘッジあり【1487】、なし【1486】商品がありますので、この2つで比較してみます。


 まず純資産に大きな違いがあります。為替ヘッジあり【1487】の方がなし【1486】の3.5倍程度多いです。この2つも2022年3月末時点では大きな差がありませんでしたが、原資産の金利上昇が著しい時は為替ヘッジありの方が支持者が多いようです。

 

 6か月チャートを比較します。

債券ETFと為替ヘッジ

債券ETFと為替ヘッジ

出典: Nikkei.com

 紺色が為替ヘッジあり【1487】、水色がなし【1486】です。


 プライスの推移はヘッジなし【1486】の方が安定的に見えますが、直近に関してはヘッジあり【1487】の方がやや優位になっています。裏を返すと、ヘッジなしは円安の恩恵をあまり受けていないとも言えます。これは金利の変化に伴う原資産価格の低下を伴っているからです。


 債券投資の目的が、金利の変化によるキャピタルゲインを得ることだとするならば、為替の変化を抑制する効果がある為替ヘッジ付きは日米の金利差が大きくなってきた今では理にかなっているということでしょう。

 

 為替ヘッジの有無が円建ての海外資産に対して与える影響を理解しつつ、将来の円高を考慮するのであれば為替ヘッジあり商品が選択肢の一つになりえると考えます。

 

 長期保有ではヘッジなし、今のような円高局面ではヘッジあり、など中級者以上の人は使い分けるという手もありそうですね。

 

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