毎月分配型リート投資信託の持続不可能な高分配金
毎月分配型投信、とくに高配当型の宿命として「基準価格が下がり続ける」というものがあります。理由は明確で、元本を削って無理して高配当を維持しているからです。ETFはこの元本からの分配金が法規制されていますので、こういう商品はありません。投資信託は良く言えばフレキシブル、悪く言えば規制が甘いのです。
「毎月分配型投資信託の基準価格が下がり続けている。しかし、ずっと持っていれば、基準価格を回復するのではないか。高配当だからこのまま我慢していれば取り返せるのではないか」と考える方もいられます。
上がって買値を回復するまで待とうという考えです。その間、高配当な利回りでしのぐということです。
しかし、その可能性は市場の大暴騰が無い限り殆どないと言っていいでしょう。例えば2017年や2020年後半から今にかけては、世界的に株式市場が上昇し続けた稀有な年でした。そんな年でも基準価格が横ばいだった毎月分配型投信、リートというのは今が逃げ時である確率が高いです。
なぜなら、今後必ずあるであろう相場の調整時にはさらに下がることが必至だからです。元本を削り続けているわけですから、よほどの上昇相場でないと基準価格が戻ることはあり得ません。
そういう意味では相場の好調さというのは、「本当にダメな毎月分配型投信」を見抜くための試金石であったと言ってよいでしょう。あれだけの上昇相場で上がらない基準価格の意味とはそういうことです。
さて、今回はそんな毎月分配型リート投資信託に関してご質問を頂いています。
毎月分配型リートを1000万円持っています。この見通しは?
いつも楽しみに拝読しています。たばぞう様のお陰で米国ETF投資に目覚めました。
私たちは再婚同士で子供がいません。二人とも退職していて主人は今年61歳、私は58歳になります。このまま賃貸暮らしでいくつもりです。収入は配当金とわずかなワンルームマンションの家賃収入です。
年金支払い開始まであと2年です。今のところは配当金のお陰で貯金は減らずにわずかながら増えていますが、今後の市場次第です。(含み益ですのでなんとも)
前置きが長くなりましたが、質問は以下の2つです。
1)防衛策としてBNDを購入しましたが、現在約32,000ドルの投資に対して、約600ドルの赤字です。毎月の配当は約63ドルです。このまま購入を続けるべきか悩んでいます。ちなみに他にはVTI, VT, VYMを円建て、ドル建てでも保有しています。この3つは何とか黒字です。
2)〇〇〇〇の毎月分配型リートを夫婦してそれぞれ約1千万円保有しています。今売却すれば配当金を考慮すると黒字ギリギリです。ただ円安と配当金が下がったため基準価格がとても低くなっています。もう少し様子をみようか悩んでおります。
お時間のある時で結構ですので、アドバイスをいただければ幸いです。
寒さ厳しきおり、ご自愛くださいませ。
毎月分配型リート、高配当の厳しい未来、宿命
まず、このリートは高配当です。二つの特徴があります。
- リーマンショック後、基準価格が下がり続けている
- 分配金も下落傾向
基準価格が下がり続けるのは元本を削り続けているから当然の結果です。また、分配金も元本を削っていますので、いつかどこかで下げざるを得ません。これからもそうでしょう。つまり、この2つの「基準価格の値下がり」「分配金の値下がり」は相場の大暴騰が来ない限り、避けようのない宿命です。
特に昨年分配金が下がったときには「高分配金が魅力だったのに!」という意見が散見されました。しかし、これは「今に始まったことではなく、これからも起こる可能性のあること」なのです。
株式市場において未来を予測することは困難ですが、数少ない予見できる商品の1つであると言ってよいでしょう。
対するBNDは全く性格の違うものです。ETFは元本から分配金を出してはいけないことになっています。
米国債券を代表するETFの1つです。今後10年、20年のスパンで見ればプラスに転じてくると思われます。短期的には弱含みですが、長期保有に耐えるETFであることは間違いありません。
幸いにして、今は相場が好調です。相場が変調をきたせば、この類の商品は大暴落します。むしろこのタイミングで逃げられることは僥倖と言ってよいと思いますよ。一度売って、現金化してよりよい商品を買えば良いですね。
気落ちせずに、まだまだ再チャレンジができますから、ともにがんばりましょうね。
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