有効求人倍率の推移だけみると、経済的に恵まれた時代
2016年の平均有効求人倍率は1.36倍でした。季節要因をのぞいた、調整済の数値です。なお、新卒採用分は含まれていません。
この1.36倍という数字は極めて良い数字と言って良いでしょう。ちなみに、団塊ジュニア世代が就職活動真っ只中の時は、北海道拓殖銀行や山一證券などの大型倒産が相次ぎました。1998年、1999年あたりがそうです。
また、リーマンショックの時も0.45倍まで下がっています。こうしてみてみると、20世紀後半から21世紀にかけて日本経済にとって暗黒の時代だったことがわかります。つまり、日本株で資産を増やすことが大変に難しかった時代と言えます。
下のグラフが年ごとの有効求人倍率です。左が西暦、中央が和暦です。有効求人倍率は右の数字です。
※厚生労働省のページから作表。
この20年で最高水準ということがわかります。
2009年以後、右肩上がりの推移を示す有効求人数
一般職業紹介状況(平成28年12月分及び平成28年分)について |報道発表資料|厚生労働省
もっとも低い平成21年、2009年はリーマンショックの影響です。求職者数の半分しか紹介できる仕事が無かったということになります。その2009年から、すでに景気が安定して7年もたったということです。
特にこの3年は求人倍率が1倍を超えています。1倍を超える数字も今までさほど多くはありません。また、2016年の1.36倍という数字を上回ったのは統計を取り始めた1963年以来数えるほどです。
1970年1.41倍
1973年1.76倍
1990年1.40倍
1991年1.40倍
この4回しかありません。1970年代は高度成長期として日本経済が人口ボーナスの恩恵を最大限に享受した時代です。1990年は株と土地の値上がり神話によるバブル期の数字です。これらの時期に匹敵する求人倍率が今です。その好調ぶりが分かります。
なお、正社員の求職倍率は0.92倍となっており、これも高い数字です。とはいえ、同一労働同一賃金など言われるように、正社員と非正規雇用者との格差は求人倍率にも表れています。
失業率の推移からも好調な経済が伺える
日本の失業率の推移(1980~2016年) ※画像出力ページ - 世界経済のネタ帳
当然ながら、失業率も2009年を境に下がり続けており、21世紀に入って最もよい数字になっています。ただし、20世紀後半の水準ほどではありません。とはいえ、GDPの停滞する中、健闘しているといえます。
経済的安定こそ、安倍政権が長期政権であり続ける最大の理由
この経済的な安定こそが安倍政権の最大の理由です。アベノミクスは賛否ありながらも今のところ成果を残しています。今後の日銀国債買い入れやマイナス金利、ETF買い入れの出口戦略がどうなるのか。あるいは出口が無くてこのまま拡大をさせていくのか。アベノミクスは経済の専門家でも意見が割れている政策です。
しかし、これほどまでに経済第一で政策を行う政権は過去にほとんど無かったと言って良く、これが今のところ功を奏しています。ちなみに第一次安倍政権は「教育再生」がテーマでした。これはまったく民意と外れており、政権は長続きしませんでした。
また、民主党つまり民進党は先の政権時の負のイメージは拭い去れておらず、自民党政権によほどの失策や大不況が無い限り、政権交代が起きるのは難しいでしょう。民主党政権はリーマンショック後の不況を引きずっていたことや東日本大震災など天変地異が多く不運だった面もあります。
しかし、その局面ごとのリーダーシップの無さ、多すぎる船頭と意見調整の難しさは日本的議会政治の負の側面をこれでもかと見せつけたところがあり、国民に深く記憶されています。むしろ、自民党に近い保守新党ができれば、そのほうが政権交代の可能性が高そうです。
しかし当然ながら経済的安定は永続的ではない
残念なことに私も含めて、数字ほどの経済的豊かさを実感できない人が多いのではないでしょうか。それはそういう状況、国のレベルに日本が置かれているということです。しかし、株価も有効求人倍率も今までになく好調であるということは認識しておきたいです。
そして、間違いなく言えることは、今の経済的安定が何十年も続くことは無いということです。今が恵まれていることを認識し、貯蓄したり、よりよい仕事に転職したり、投資経験を積んだり、不況に強い生活スタイルにしておくことが大切です。
人によってはそれが節約であったり、住居費などの固定費の削減であったりするのでしょう。いずれにしても、個人個人で今できることを粛々と積み重ねておくことが大切と言えそうです。
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求人倍率が上がるということは、労働人口が減ってきている証左とも言えます。
問題は求人倍率の数字ほど経済的に豊かになっている実感がないことですね。財政は負債が大きく、個人レベルで対策が求められる時代がくるかもしれません。