日本株のリターンは米国株を上回る!?
日本株のリターンが米国株を上回るという主張をご紹介いただきました。ブログやツイッターを始めてから集まる情報が格段に増えました。こうやって質問という形で情報提供をしてくださる方がいらしたり、ツイートして情報を回してくださる方がいられるからです。
実にありがたいことで、感謝しきりです。さて、頂いたご質問です。
------------ここから
「kayo」さん
とてもわかりやすい文章で、たぱぞうさんのファンです。米国株に興味を持ったのですが・・・・次の記事を読んで、よくわからなくなってしまいました。
「インフレ調整後では日本株は米国株を上回る」
1998年からの18年間におけるアメリカのインフレ率は年平均2.2%です。一方、日本は−0.02%と、インフレどころかデフレになっています。
1年だけ見れば大した違いではないように思われますが、18年経つと50%近く差が出ます。
例えば、1999年に米国で1ドルだったものは、インフレ率に従うと1.47ドルになっていますが、日本で100円ものはほぼ100円のままです。つまり、インフレ率の高い国では、インフレ率以上に株価が上昇しなければ、実質的に損が出てしまうのです。
~中略~
まとめ
- インフレ調整後では、日本株のリターンは米国株を上回る。
- ダウ平均が強いのは、厳選銘柄で構成され、常に入れ替えが行われているから。
- 優良銘柄を割安な時に購入すれば、長期的に高いパフォーマンスが得られる。
指標 | S&P500 | TOPIX | ダウ平均 | 日経平均 |
1998年12月 | 1,229.23 | 1,086.99 | 9,181.43 | 13,842.17 |
2016年12月 | 2,238.83 | 1,518.61 | 19,762.60 | 19,114.37 |
上昇率 | 82.10% | 39.70% | 115.20% | 38.10% |
インフレ調整後 | 23.80% | 40.10% | 46.30% | 38.50% |
理解できるように記事で解説していただけたらうれしいです。これからも購読しますのでブログがんばって更新してください
---------------引用はここまでです。適宜改編しています。
結論から言います。2,3はその通りです。1はインフレ調整の考え方の違いです。この表の赤字の部分以外を参考にすると分かるように、圧倒的に米国株が優れていたことが分かります。以下、触れていきます。
インフレ率を考慮した投資をするのは理にかなっている。
原文にあるように、アメリカの平均インフレ率は2%です。アメリカ増配企業の増配率がだいたい2%を目安とするのは、インフレ率に負けないようにするという側面があります。そうしないと、実質的に減配になってしまうからです。
例えば連続増配企業のAT&Tが常に2%程度の増配をするのはそういうことです。
また、新興国投資が難しいのは、通貨のインフレ率が5%~8%程度あると、これを上回るパフォーマンスを出し続けなくてはいけないからです。しかもその通貨が脆弱なことが多く、〇〇ショックではとたんに資金が逃げ出します。
対する日本はデフレ状態が長く続き、物価上昇はこの数十年ほとんどしていません。また、1人当たりのGDPや年収が殆ど伸びず、横ばいが続いています。そのため、ドルベースで考えると大きく落ち込みはしていないものの、およそ20年間成長していないのです。
世界経済のネタ帳から
例に出ている1999年だと、アメリカと日本の一人当たりGDPはほとんど同じでした。およそ35000ドルです。それがアメリカでは今や57000ドルになり、日本は37000ドルです。インフレと経済成長による伸びが含まれていると考えてよいでしょう。
この間為替はインフレ率ほどの変化をしていません。100円±20円というところでボックス相場を形成しています。
為替・ドル円相場の超長期チャート | 金プラチナ相場情報 Let's GOLD
ドル円相場が100円±20円を外れるのはこの20年においてはほとんど無かったということになります。ボックス相場だったと言って良いでしょう。
ドルベースで考えるとインフレ分だけ円が弱くなった。
以前からは考えられないぐらいに、多くの旅行者を日本国内で見るようになりました。統計を見ても、外国人旅行者の数は増え続けています。これは、日本という国の物価が外国の人から見て安く感じられるようになったからです。費用対効果の面で見合うようになったからです。
- 海外の国々の物価や賃金がインフレで上がっている。
- 日本の物価はデフレで横ばいか漸減。
- 為替相場は約20年ボックスで1ドル=100円
これはつまり、日本国内では感じませんが、海外から比べると相対的に貧しくなったということです。日本は一人当たりでみると急速に中進国化しつつあると言えます。
インフレ分も含めて増配し、同様に株式市場指数も上昇する。そういう相場に資金を投入していないと、円を持っているだけで世界的にはどんどん知らぬ間に減価していくのです。それが日本円の現在の地位だということです。
ドルがインフレで年間2%減価し、円が2%分為替で強くなっていれば、等価です。しかし、現状は為替は強くなっていません。この20年、まさに私たち日本人はゆでガエル状態だったということです。
文中にあるように1999年の1ドルの価値が現在の1.47ドルになっているとします。それならば、その分日本円はドルに対して強くなっていないと、円が減価していることになります。
日本国内では給与を円で得ています。これを貯金などに回してしまうと、インフレ分負け続けることになります。世界の基軸通貨であるドルをベースに考えないと、価値がわからなくなります。
ドル円が適正な範囲であるならば、ドル転してリターンの高い投資に回すべき根拠がここにあります。
インフレ調整後の各国株価指数
1900~2013年と1964~2013年の期間における世界各国のインフレ調整後の株式の年率リターンです。孫引用になりますが、元データはクレディスイスです。
これで殆ど答えは出ているのではないでしょうか。年率2%の差は20年で40%の差になります。実際に運用している感覚としては、もっと差がありますね。
TOPIXとS&P500、NYダウ平均と日経平均
この2つは似ています。私はTOPIXとS&P500のほうが好みにあいます。
ダウ平均と日経平均は銘柄の入れ替えが頻繁で、除数を用いて連続性を保っています。ただ、やはり完全なる連続性というのは当然ながら難しいです。
時機に応じた銘柄入れ替えがNYダウの強みであることは間違いありません。とくにNYダウは30銘柄しかありませんから影響が大きいです。
いろいろ書きましたが、やはり最強なのはアメリカ市場、さらにVTIやVOO、配当を得るならばVYM。リスクとバランスを考えるとインデックスは最適だと思います。私は個別株も好きですけどね。
投資はさまざまな考え方があります。自分に合った適切な情報を取捨選択して生かしていく能力が問われる時代になっています。条件が変われば最適解が変わる、投資とはそういうことだと思います。私は米国株式を今は選好しています。
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