日本の将来の人口推移がなかなか深刻
国立社会保障・人口問題研究所が公表した資料に「日本の将来推計人口」というものがあります。この資料が秀逸なので、ご紹介します。
言うまでもありませんが、政府系・政府研究所系の出す資料は優れているものが多いです。私たち個人投資家にとっても必読と言って良いでしょう。マクロでの社会理解に役立ちます。しかもネットで無料で読めるのが素晴らしいところです。
以下引用しながら触れていきます。
2015年の日本の人口ピラミッドはこうなっていた
2015年の日本の人口ピラミッドです。この人口ピラミッドからわかることがいくつかあります。
- 団塊世代および団塊ジュニア世代が突出している
- 年少人口(0~14歳)の少なさが際立っている
この2つです。
戦後すぐに生まれた団塊世代、さらにその子ども世代になる団塊ジュニア世代が突出して多いのが日本の人口ピラミッドの特徴です。団塊世代はすでに労働人口から外れつつあり、世代のバトンが引き継がれていることがこの表からも分かります。
団塊ジュニア世代は現在すでに職場でも中堅からベテランになっており、今の社会の中心を担う存在になっています。この世代は就職氷河期にあたる世代です。厳しい受験戦争、厳しい就職を経てきています。
この生存競争の厳しさが少なからず影響しているのが、就職難やそれに伴う引きこもりです。生き抜くうえで、様々な困難さに直面してきた世代が、団塊ジュニア世代でもあると言って良いでしょう。
そのため、団塊ジュニア世代は次のベビーブームを作り出せませんでした。就職し、恋愛し、家庭を持ち、家族で過ごす。この一見、普通のことがとてつもなく難しいことだと実感した世代です。この間、若年層に対する政府の援助は限られ、自助努力、自己責任が強いられました。
このことが日本の将来に大きく影を落としています。
2040年の日本の人口ピラミッドはこうなる
2040年での日本の人口ピラミッドです。将来予測になります。ここから読み取れることが2つあります。
- 2015年に見られた団塊世代の山が消失している
- 団塊ジュニア世代が労働人口から外れつつある
2040年には、団塊世代の人口の山が、人口ピラミッドから消失していることに気づきます。辛うじて女性の90歳以上のところに、なだらかな山を認めることができます。
しかし、2015年のような突出したものではありません。男性に至っては完全に山が消失しています。
男女の平均寿命の差を如実に表しています。団塊世代はこのころ90歳を超える計算になります。男性の寿命は女性に比べて短いことを加味した人口ピラミッドであることがわかります。
また、2040年には団塊ジュニア世代が労働人口の年齢から外れています。従って、社会保障、具体的に言うと老齢年金を支えるのは相当な困難が伴います。人口構成上のマジョリティである団塊ジュニア世代が完全に消費階層になるからです。
2065年の日本の人口ピラミッドはこうなる
2065年の日本の人口ピラミッドです。出生率が低位であると予想した場合、0歳児の同年代人口がおよそ40万人割れ水準まで減っています。2019年時点で、すでに出生児数は90万人を割っていますから、現実的な数字といってよいでしょう。
団塊世代が200万人、団塊ジュニア世代が180万人を超えたのに比べると、およそ100年で激減と言って良いでしょう。
労働人口層が老齢年金受給層を支えるという賦課方式の基本を考えると、考えさせられる予測です。
将来的な老年(65歳以上)人口割合の推移
老年(65歳以上)人口割合の推移 を見ると、すでに2045年前後には人口のおよそ35%が老年であるという事実が見えてきます。2015年の実測値から2045年までの間に急激に割合が増えます。
その理由は団塊世代と団塊ジュニア世代の老年化ということになります。
日本人の平均寿命の推移はこのように予測される
平均寿命の推測値です。将来的に男女ともに現在から5歳ずつ増えると見込まれています。
- 女性=93歳
- 男性=85歳
上記が将来的な平均寿命になると予測されています。長くなりましたが、これらの資料を踏まえて以下で私見を述べたいと思います。
将来の人口推移から、生き方あり方の変容が予想される
まず、すでに年金制度の見直しは不可避になりつつあるということです。具体的にはどのような方向性になるのでしょうか。
まず、減額というのは現実的ではありません。生活水準を下げることに繋がり、今年金を受給している層の同意を得られないからです。
同意を得られないということは、大票田である団塊世代の支持を失うということを意味します。つまり、選挙で勝てなくなります。したがって、団塊よりも若い世代に負担をかける方向になります。
- 年金支給年齢の繰り上げ
- 加入期間の延長
この2つが議論されるのはそういうことです。たとえば60歳定年制が70歳定年制になれば、それだけで労働人口が増えます。さらに、現在の加入期間である20歳~59歳を20歳~69歳とすれば、年金財政も楽になります。
今まで支給されていた年齢層が支払う側になるわけですから、その効果は絶大です。平均寿命の伸び以上に、支給年齢を遅らせれば、年金財政はたちまち好転します。つまり、現役時代を延長するのがもっとも現実的で効果的ということです。
退職年齢はかつての55歳から、60歳になり、65歳になりました。今後は、70歳からさらに上の年齢での退職が議論されるようになるのでしょう。
定年延長の代償として社会の活力を失う結果になる、か
これも完全に私見ですが、仮に定年が70歳に伸びれば、社会全体の活力は急激に失われていくと予想します。若い人たちが若い人たちの価値観や感性で新しいことを創造する場が、今よりも限られるからです。
自分より年上の部下がいる職場を想像してみると分かりやすいと思います。いくら自分が上司の立場でも、年上の部下の意見をうかがい、調整するように動くでしょう。年上を敬うのは当然であり、その経験を尊重するのが私たちの文化では自然だからです。
結果として、いつまでも変わらない、旧来のままの姿がどの業界、どの職場でも見られるようになると予想します。変えて失敗するよりも、変えずに前例を守って評価される傾向が強まるからです。
少々話は飛躍しますが、この20年を見ても米国ではアップルが再興し、グーグルが生まれ、インスタなどのSNSが世界を席巻し、アマゾンが小売り業界の雄に伸長しました。対する日本は産業構造が硬直化しており、時価総額で優位になる新しい企業が殆ど登場していません。
価値観の硬直化、前例主義とはこういうことであり、この社会硬直の傾向がますます強まると予想します。
あまり産業構造が変わっていないことがバブル期の時価総額ランキングから見て取れます。変わったのは世界における順位です。低下の一途をたどっています。
超高齢化社会を生き抜く個人年金術、自分の年金は自分で作る!
超高齢化社会を生き抜く個人年金術は3つあります。
- 健康第一
- 貯蓄
- 適切な投資
この3つです。
健康であれば勤労意欲も減退させることなく、長期にわたって働き続けることができるでしょう。そうすれば、年金を心配することもありません。継続した勤労収入が得られるからです。
2つ目は貯蓄です。投資の原資を作るべく、貯蓄に励むことです。支出や貯蓄は自分の心もち、生活水準でコントロール可能なものです。これに対し、勤労や投資は相手あってのことですから、完全に管理下に置くことは不可能です。そういう意味ではすべての基本になるのが貯蓄です。
3つ目が投資です。適切に、将来の明るい人口増加国、経済成長国に投資をします。これは、個人レベルでは個人の資産の増加を意味します。安定的なインカムの確保にも繋がります。
国家レベルでは、成長力ある豊かな国の利益を老齢国である日本へ還元させる役割も果たします。国民1人ひとりが海外投資をすれば、その富の還流はそれなりのレベルになることでしょう。
明日の相場も分からないような不確実性の高い世界を私たち個人投資家は生きています。それでも自分が信じる未来に投資をする、それが豊かな未来につながることを願ってやみません。
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