年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用報告
近年、日本国債中心の運用からバランスファンド的な運用へ転換した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。ここの投資方針は全ての投資家の参考になるものですので、紹介します。
http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h28_q3.pdf
運用資産額は144兆8,038億円です。
平成28年度第3四半期の運用利回りが7.98%です。10兆円以上の利益を上げています。もっとも、これは出来すぎで、この数値を永続的に期待するのは間違っています。
平成13年、つまり市場運用開始以降は実に、53兆円もの運用益が出ています。収益率は年率で2.93%となっています。比較的落ち着いた数字になっていることが確認できます。
また、配当収入は2015年度が2.5兆円、2016年度が2.7兆円程度見込まれており、漸増傾向にあります。このインカムゲインこそが、年金運用の柱となるべき存在です。
これはジェレミー・シーゲル大先生が主張するところの長期投資の効果そのものです。もちろん、相場というは上がり下がりがありますから、マイナスに転じる可能性もないとは言えません。しかも今は世界株高です。
この数年の運用益を持って大成功と位置付けるのは早計であることは確かでしょう。しかし、低利かつ単一国家の国債を握り続けて「安心・安全」とするのは間違いであり、分散投資の真逆を行くものであるという認識は持っていたいです。
この場合、低利かつ単一の国債とはズバリ日本国債のことを指します。すでに日本国債は発行額が異常値になっており、出口戦略も通貨の希釈化か緊縮財政、永久債ということが言われています。そういう国債を握り続けるリスクを考えたほうが良いことは言うまでもありません。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革後ポートフォリオ
次にポートフォリオを見てみます。
ここで気になるのは、国内債券、つまり日本国債の比率の高さです。バランスを考えると、減らすべきは国内債券ということになります。世界経済を見通して、世界経済の比重を大きくして投資をしたほうが安全です。
具体的には各国GDPと成長率が1つの目安になります。
ただ、近年まで国内債券が多かったことを考えると、そこまで急激な変更を求めるのは乱暴でしょう。
外国資産を増やしているのは好感が持てます。今ある国富を成長国に転移し、縮小経済に備えるのは意味あることです。それは、旧宗主国であるヨーロッパの大国の経済的な強みをみても明らかです。
ともあれ、ポートフォリオを見る限り、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針は安心できるものです。ちなみに、外国株式部分は
MSCI KOKUSAI
MSCI EMERGING MARKETS
MSCI ACWI
を買っています。円ベースです。個人で購入するならやや微妙な感のあるETFですが、これだけ大きな運用規模となると分散と言う意味から妥当性はあるでしょう。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を政争の具にしてはいけない。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用改革を受けて日本株式、外国株式及び債権を買い始めたときには
「国民の年金をリスク資産に振り向けるのはけしからん」
「そらみろ、マイナス運用じゃないか」
という意見が多く聞かれました。これは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針への批判というよりもむしろ、変更を加えた政権に対する意見で、年金運用よりも政権に対する思いが強かったのだろうと推察されます。
野党は政権与党に対して何でも反対することで存在意義を出さなくてはいけない事情があるのは分かります。しかし、年金は国民の資産ですので政争の具にして不利益を被るのは私たちです。
ちょっと投資をしている人ならば分かると思いますが、分散は投資上の基本であり、リターンの少ない債券、しかも超低金利の債券に集中投資をするというのは間違っています。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用の手口は投資界においては常識的なものです。投資の素人による政争の具にしないためにも、早急に政治に口出しされないような独立性の確保が必要です。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はすでに資産を取り崩している
運用が常識的な手口なのは間違いありませんが、それでも資産を取り崩しています。それほどに年金支払いの圧力が大きいのです。私たちの老後資金の考え方のように、運用益で支払いができれば理想です。
しかし、それをするには高齢化社会が進展しすぎました。また、運用改革も遅きに失した感があります。今後も間違いなく取り崩しによる年金支払いが続きます。今から20年、30年後には今の受給額の実質5割4割のレベルになっているのではないでしょうか。
直近の運用益で浮かれずに、「それでも安心できない年金運用の将来」という視点はもっていたいです。
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