対面証券会社におけるリテール営業の実態
対面証券会社のリテール営業、つまり個人営業は大変な岐路に立っています。
個人個人の知識が高まり、なおかつ投資の知識が得やすくなったからです。今後、ネットにアクセスできない世代が投資から卒業していきます。その後、全世代がネットにアクセスできるようになると、がらりと景色が変わるのでしょう。今はその過渡期です。
これは、かつての新聞テレビと購読者視聴者の関係に近いです。情報を提供されるだけでなく、自らその情報を精査し、検討することが可能になるということです。
得られた情報は本当なのか、情報の提供元はバイアスなしに中立な情報を提供できているのか。そのような検討をする場がネットです。昨今、テレビの広告費をネット広告費が上回ったということがニュースになりました。それはそうでしょう、思想の自由、表現の自由を個人が手に入れた場、それがネットです。
スマホやタブレットを介在としたスモールスクリーンへのニーズはますます高まり、今やテレビリモコンにyoutubeボタンがある時代です。コンテンツによっては、2kの地上波よりもyoutubeなどのほうが4k対応で画質もきれいになっていますね。逆にテレビ画面がこういったネットコンテンツに侵食され始めているのです。
ネットの情報の正誤はともかくとして、情報を「練る場」があるという点において、ネット以前の時代とは大きく異なるのです。
そういう意味では、対面証券に見られた高信託報酬・高手数料の金融投資商品の回転売買、それで利益を稼ぐスタイルは、急速に古くなったと言って良いでしょう。
対面証券におけるリテールの厳しさは、その変化の波を肌で感じる現場の若手層と、指示を出す上層部の意識の断絶にあると言って良く、それが一部若手社員の離職、転職に繋がっています。
さて、いつもながら前置きが長くなりました。今回は昔ながらの高信託報酬・高手数料の金融投資商品を買わされて困る、という方からのご質問を紹介します。
対面証券におけるリテール営業が変なものを買わせて困る
たぱぞうさま、はじめまして、毎回ブログを楽しく読ませいただいております。
さて、私は職業は自営業の49才です。妻、子供が小学生と保育園の4人世帯です。
三年前に父親が他界し、父の株式や社債などの金融資産を相続しました。
父が生前付き合いのある〇〇証券の担当者から、株もリートも見直したほうが良いですよとアドバイスをもらい、3100万円の内、JPMザジャパンを約1800万円、イーストスプリング インドインフラ債券ファンド(毎月)を1200万円運用しています。分配金は再投資してます。
現在は、JPMザジャパンがマイナス20%弱、インドインフラがマイナス10%ほどで一回もプラスに転じておりません。
なかなか落ち着かない日々を過ごしているところ、たぱぞうさんのブログを拝見しまして、今のままで良いのか、と疑問に思うようになりました。また、証券マンには2通りいると言う記事も拝見して、尚更日々悶々とするようになりました。
〇〇の担当者は、腰が低くく、ゆっくりと分かり易く言葉を選んで話すタイプの方です。
最近も自宅に来たので今後も大丈夫かと確認したが心配は一切いりません。今手放すともったいないとも言われました。
また、追加で投資どうでしょうと商品を勧められてしまいました。なかなかこう言う状況で手を出す気分にもなれず断りました。
因みに商品名は 第104回株価指数参照円建信託社債デジタルクーポン型早期償還条項付き というものです。
色々しらべましたが、なかなかハイリスクな商品だと知り、担当者への不信感が一段と深まってしまいました。
たぱぞうさん、今の私の状況はどう思われますか。私自身は、たぱぞうさんが勧める米国株高配当、ETF、S&P500などで資産を増やして行きたいと考えています。
また、丸紅のインフラファンド投資なんかもインカム狙いで良いかなと思っておりますがどうでしょうか。何か良い投資方法がございましたらご教示いただければ有り難いです、
資金一括投入か定額に積み立てるか、下がった時に買い増しするか。なるべく長期、20年位で資産を増やしながらインカムも頂けるような投資をしたいと考えています。よろしくお願いします。
対面証券におけるリテール営業の実力を知るには、リターンを見ればよい
お父様からの相続で、リテール営業さんも相続なさったということですね。残念ながらどの商品も、今の時代にそぐわない、高手数料商品です。私ならば決して買わない、そのような商品群ということになります。
おそらく、リテール営業さんも買わないでしょう。「内規で買えない」という言い方になるかもしれませんが、少なくとも自分の親族には売らない商品ということになります。売るほうも、買うほうも苦しいですね。
リテール営業さんが、お店の方向をみて仕事をしているのか、顧客の方向をみて仕事をしているのかは、商品を見ればすぐにわかります。信託報酬が1%を超えるような商品で顧客のポートフォリオを埋め尽くし、なおかつリターンが出ていなければ、それはノルマで販売にしているにすぎません。
顧客に不信感が芽生えている中で、さらに商品を勧めてくるあたり、タフネスさは感じますね。いずれにしても、冒頭申し上げたようにネットで情報を得て、いくらでも練れる時代です。
過去に決別し、新たな資産運用の道を歩まれることをお勧めします。ともにがんばりましょうね。
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こちらも似た話ですが、このような話が多すぎるというのはリテールの厳しさを示しているともいえるでしょう。ビジネスモデルを根底から見直さないと、持続可能な仕事になりません。それは、銀行窓販もそうですね。
意外かもしれませんが、たぱぞうも対面証券で口座を持っています。それなりの金額を入れていますね。優秀な営業さんももちろんいられるわけです。
一世を風靡した1兆円ファンドです。この時代とは顧客の知識が全く違います。同じ手法でやれるのは、あと何年でしょうか。