認知や障害といった、誰もが向き合う現代的課題と資産管理
認知症や各種障害というのは、人によっては身近、あるいは遠い存在なのかもしれません。多くの人には、日常生活を送っていると他人事のように思えるのではないでしょうか。それはそうなのですね。街を歩いている人は健康な人がほとんどだからです。
人の助けが必要な人は病院や施設に入院・入所、普段の生活では出会うことは限られています。私自身介護の経験がありますから、それにより初めて向き合った世界ともいえます。職場と家の往復だと、人の支えが必要な世界に接することが極めて限られるのです。
今後、高齢化社会がさらに進むにしたがい、今の非日常が日常になる可能性はありますね。在宅介護というのはそういうことです。
同時に、私たち日本人の所得は横ばい、税金や社保などを考慮した国民負担率は増加の一途です。そう考えると、個人での資産運用、資産管理という時代から、ファミリーでの資産運用あるいは管理という時代になりつつあるのかもしれません。行政など社会的な支援のみならず、ファミリーで支えあうという発想ですね。
しかし、過度に恐れる必要はありませんね。今は優れた投資先がありますから、時間をかけてゆっくり資産運用をして備えていけばよいのです。
さて、今日は認知のお母様と障害のお兄さんを抱えた妹さんからのご相談を紹介します。
認知の母と障害の兄の将来を見据えた資産運用をしていきたい
いつもブログを楽しみに拝見しております。
早速ですが、金融資産比率、今後の投資について伺いたく、メールいたしました。
昨年、父が亡くなり、
- 母 → 父の生命保険 1750万円
- 兄 → 実家の土地、建物
- 私 → 定期預金、有価証券含め8350万円
を相続しました。
認知症の母、聴覚障害と軽度知的障害がある兄が必要な時に、私の相続した内5000万円を使う、と言う遺言がありました。
認知症の母は、先月サービス付高齢者住宅に入居しましたが、入居費用は父の遺族年金月額19万円で賄えています。
兄はパート勤務月額13万円で実家で1人暮らしの生活は十分出来ており、あと4年60歳でパート勤務が終了になったとしても、障害年金が年間100万円弱、18〜40歳まで正社員で勤務しており障害厚生年金がある為、仕事を引退した後も月額14万円程の生活費は確保出来ます。
私(48歳)は、実家の隣の県に嫁ぎ、夫50歳、長女20歳(大学生)、長男15歳(中3)と暮らしております。
夫の年収1300万円あり、子供達の今後の学費の蓄えもあり、夫も私も見直しを何度も重ねて必要最低限の保険にも入っており、生活に問題はありません。
以上を踏まえて、たぱぞうさんの本などを拝見しながら考慮し、今年初めから投資を開始しました。
現在、SBI証券にて
【投資信託】
- emaxisslim米国株式s&p500 150万
- 楽天vti 150万
- SBI s&p500 150万
【米国ETF】
- VTI 300万
- VYM 250万
- ノムラ米ドルMMF 40万
となっております。
(その他、夫の収入から、積立NISA満額2年前より実施中)
以上を踏まえて、父の遺言にある兄と母に使う5000万は、まだ使う必要がない為投資に回し、運用させて増やしたいと考えています。
今後3年程掛けて投資信託3000万、米国ETF3000万に積み立てていき、現金1350万という比率で考えています。
しかし、私48歳の年齢を考えつつ、現在の攻めの投資ではなく、BNDなどの債券ETFも入れるべき?それともこのままで良いのか?
相続税対策に家族3人の1500万の終身保険も、考えるべきか?悩んでおります。
母を介護施設に入れ、介護費用が月20万もかかる事がわかり、将来の子供達に負担をかけないように資産を増やしたい事が考えにありますが、どうにも考えがまとまりません。
たぱぞうさんならば、どのようにお考えになるか、意見を伺いたいです。お忙しい中、申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
安定、安全を考慮した無理のない資産運用を行うことが第一になる
お母様とお兄様の将来を担うということですが、かなりここまでで道筋をつけられましたね。金銭的な不安はほとんど無いと言ってよく、持続可能な介護になりそうです。
そういう意味では、ご自身と亡くなられたお父様の共同作業が見事に結実したということですね。お子さんも含めた計画的な人生設計、資産計画、まさに自主自立です。
運用方針も王道で、安心できるものです。その王道を踏まえて検討するならば、以下の2つですね。
- 外貨の取り扱い
- 相続税対策の終身保険
それぞれ触れてみましょう。
まず、ポートフォリオはシンプルなS&P500などの指数が中心になりますね。これらは今は投資信託や東証上場ETFで購入できます。
従って、管理の手間がかかる米ドルでの投資はあえてしなくてよいように見えます。
債券部分ですが、これは現金で代替してもよいでしょう。あるいは、投資信託でSlim先進国債券がありますから、いずれにしても無理して外貨にしなくてもよい部分です。
そう考えると、米ドルは全て円で管理してもよいですね。
次に相続税対策の終身保険です。たしかに、相続税対策の終身保険は1つの方法ではあります。非課税枠の法定相続人1名×600万円、さらに生命保険の非課税枠500万円、これを活用することになるからですね。
しかし、配偶者の非課税枠のほうが圧倒的に大きいので、まだ具体的な答えを出すには早いように思います。
ひとまず、当初計画の通り運用をしていき、徐々に相続を意識していくという形でよいでしょうね。つまり、今からお子さんの相続を意識した保険を組まなくてよいということです。
お母様とお兄様、お二人の経済状況を見極めてからの対策でも遅くは無いですね。7:3や6:4と株式:安全資産の割合は言われます。過度なポジションをとらず、一気に資金を入れることなく、分散を心がけていくと良いですね。
プレッシャーに感じることなく、いろいろな機関や人の手を借りつつ過ごしていかれると良いですよ。
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時間は資産運用の大きな味方です。
環境の変化があるときは、重大な決断をしないという原理原則のお話です。
現金は長期で減価しますが、その流動性や汎用性を考慮すると、やはり重要なアセットということです。