日本の労働組合はオープンショップ制に基づく
労働組合は労働者の地位や待遇の改善を目指して作られた組織です。日本の場合は企業別労働組合や職域別の労働組合という形が多いですね。各企業の労組、職域に関しては自治労などが該当することになります。
雇用者と労働者の関係というのはどうしても労働者のほうが立場が弱くなりますから、連携することで自分たちの権利を主張していこうということですね。ただし、昨今は労働基本法などである程度常識的な範囲で労働者の権利は守られるようになっています。
そういう意味では労働組合が強かったころ、戦後から高度成長期にかけての切実さはやや薄れているといっても良いでしょう。逆に、恵まれた環境だと組合に所属する意味を見いだせず、やめてしまう人もいますね。
日本は「オープンショップ制」に基づく労働組合ですので、労働組合を抜けても待遇面では変わらないことが多いです。日本ではほとんど見られませんが、「クローズドショップ制」だと組合員から雇用しなくてはいけません。つまり、労組を抜けて職場で働き続けるというのはできない仕組みになっています。
また、労働組合は一部の組織においては幹部養成所のようになっています。有望な若手や中堅が組合に呼ばれ、数年組合で働きます。その後、現場に戻り将来的に組織の幹部になっていく構図です。
組織によっては元組合幹部がほとんどを占める重要部署が社内にあるケースもあります。つまり、組合幹部にならないと通れない出世コースというわけです。
このような組織では、ある意味では労働組合が経営者側と労働者側の潤滑油のような役割を果たしており、これも日本的な独特の労働組合のあり方なのかもしれません。いわゆる「御用組合」というのはそういうことですね。
入りたくても入れない労働組合、職場規模と非正規従業員
以下の資料はすべて連合からの資料です。
労働組合は小規模事業者だとほとんど組織されていません。そのため、労働組合というのはこの表をみてもわかるように、実は大企業に所属する人たちが多く所属する組織になっています。
また、基本的には正社員向けの組織であり、非正規従業員の組合員勧誘はまだまだです。
そういう意味では、本当に労働組合が必要な比較的労働環境が厳しい人たちが加入していない、あるいはできないという可能性をはらんでいます。
いずれにせよ、このあたりの課題は以前から指摘される通りです。今後は特に高齢者の再雇用に伴う再加入や非正規従業員の加入率の向上というのは1つの課題になっていくのでしょうね。さて、今回はこの労働組合費に関することでご質問をいただいています。
労働組合費が年間10万円を超えて負担感があります
たぱぞう様
いつも楽しみに拝見しております。何度か質問させて頂いている者です。従業員100人程の会社の労働組合に入っています。
40代で2人の子持ちと一番お金がかかる時期に、組合費を年間10万円ほど天引きされ、かなり負担になっています。
現金を半分運用し利益をあげ、その分組合費を年2,3万円にしてほしいと、組合の執行部に提案していますが、“組合員からあずかった大切な金で損したらどうするんだ”と、全く相手にされていません。
現在は一定の組合費を定期預金しているそうです。楽天VTIやイーマクシス先進国株式といった投資信託、もしくはVTIやVTを「長期、分散、つみたて」して運用し組合費をかせぐ、という考えはおかしいでしょうか?
方法論も含めてご教授頂ければさいわいです。うちの会社の組合には7000万円の現金があるそうです。(正直、組合を辞めたいです。活動で時間や組合費を取られているのに、諸要求にタダ乗りしてる非組合員を見ると怒りと悲しみがこみあげます)
労働組合費の相場は月額約5000円
質問者様のケース、労働組合費が年間で10万円というのはやや高いですね。連合の資料によりますと、年間では平均6万円が相場になっています。ただ、大きな組織だと組合費は安くできますし、小さな組織だとどうしても組合費が高くなりがちです。これはスケールメリットが働くからですね。
また、動員なども大きいところは分担できますが、小さいところは負担が重複するのでなかなか大変です。
こちらが組合費の平均になっています。だいたい5000円というところが多いですね。
労働組合費はどこの労組もプールしているはずですが、運用が大変難しくなっています。それはやはり定期預金金利や国債金利が低いからです。とはいえ、ただでさえ組合員の減少、組織率が課題になっている中で、もし積極運用で損失を出してしまったらそれこそ大ダメージを受けるでしょう。訴訟にもなりかねません。
そういう意味では、せいぜい定期預金か日本国債での運用となってしまうのは致し方ないところですね。
そもそも、組織というのは前例通りにやっていれば、失敗しても前例のせいになりますので、責任論が生じにくいです。しかし、何かをドラスティックに変え、失敗したら自分の責任になります。
組合に限らず、組織というのは「下手を踏まない」というところにプライオリティが置かれますから、労働組合費を積極運用に切り替えるというのはリスクでしかありません。
労働組合をやめたいというお話はよく聞きます。おかしな動員、はたから見て価値付けしにくい雑用もあるからでしょう。しかし、経営者と労働者の関係を考えると、歴史的な意義も含めて存在する意味は大きいですね。入りたくても入れないという人が大勢いるというのも事実です。
いずれにせよ、労働組合自体も「働き方改革」をし、労働者の地位向上のために内容を精選してほしいと思っていたのは私も同じです。それは組合費の使途もそうですし、雑務もそうです。
しなくていい連絡はしない、いらない用紙は回覧せずに自己判断でバサバサ捨てる。集会は基本的には開かない。このように私は職場で対応していましたね。丁寧な人は全てきちんとやりますから、考え方次第ですね。
組合費に関しては、十分な貯蓄がありますから下げる方向で交渉の余地がありそうです。慣習的に定額で集めているところも少なくないですね。
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