先進国への投資は意味が無いのか
個別株ではない先進国への投資というと、日本ではまずMSCIコクサイ連動の投資信託が思い浮かびます。これは日本を含まない先進国22か国への投資ということになります。
しかし、昨今の米国の時価総額の増大に伴い、およそ7割が米国への投資になっています。直近を見ても米国の比率は、2018年から2020年にかけての2年間でおよそ3%ほど上昇しています。
国際分散投資をしたい人にとっては不本意かもしれませんね。米国に集中しすぎるからです。しかし、この7割の米国株式がパフォーマンスをこの10年で大きく引き上げてきたのも事実ですから、なかなか判断に難しいところはあります。
このような過去の比率からしたら若干違和感を覚える偏りというのは、11セクターの時価総額の偏りにも見られます。これをパワーバランスの変化とみるか、時代と産業の変化とみるかで相場の評価も変わるのでしょう。
米国株集中投資をする人にとっては、そもそも先進国への投資に価値を見出す人が少ないですね。そうなると、投信やETFで言えばS&P500やVTIなどの他の商品を選ぶということになります。
いずれにせよ、ほんの数年前までは海外株投資信託と言えばほとんどMSCIコクサイ連動商品しかなかったわけですから、状況は大きく変わりました。
さて、今回はこの先進国への投資についてご質問をいただいています。
先進国への投資を避け、新興国への投資をしたくなる
たぱぞう様
いつも楽しくブログを拝読させていただいてます。将来への不安から今年から資産運用の勉強を始めた「なーすまん」というものです。今回質問があり連絡させていただきました。
それは「先進国への投資」です。
様々な本やブログを見ているとアメリカ株への投資の優位性は揺るぎないものと確信していますが、アメリカを除く先進国に今後投資する意味はあるのかと思うようになりました。
労働人口の減少が大きな理由でありますが、その他に先進国は結局アメリカの経済に左右されている印象が強い印象があります(まだまだ勉強不足なところもあり、自分の印象なので間違っていたらすみません)。それなら成長率が期待される新興国に投資するほうがいいのではないかと思っています。
現在の運用内容としては
- ideco:楽天VTI(満額1万2千円)
- つみたてNISA:emaxis slim S&P500(諸事情があり1万3千円しか投資してませんが近いうちに満額に設定する予定です)
という状態です。そしてこれから以下の割合で投資していこうと思っています。
- アメリカ株(楽天VTI、emaxis slim S&P500)50%
- 新興国(VWO)25~30%
- 債券(BND)25~30%
新興国や債券へはドル建てで行いたのでVWOやBNDの購入しようと検討しています。
私は地方で看護師をしているもので妻と2歳半の子供が2人います。妻は現在、無職ですが再来年には看護師として仕事復帰する予定です。復帰したら私と同じポートフォリオで資産運用する予定です。
お忙しい所、大変申し訳ありませんがご教授いただけますと幸いです。よろしくお願いします。
追記
もし先進国も投資するメリットがあるならVTやVEUを考えています。VTのほうがシンプルですが、アメリカ本国では不人気であることやETFの総資産額を考慮するとVEUのほうがいいのかなと思っています。
先進国投資に大きな魅力は感じない
私は先進国への投資というのはあまりリターンが期待できないと思っています。やや話が大きいですが、ざっと以下のような理由からです。
- 労働人口の減少に伴う社会保障費の増加
- 社会全体の高齢化に伴う硬直化
- 高度に発達し複雑化した社会
ズバリ一言で言うと高齢化ということです。高齢化に伴い、社会保障つまり医療・年金・保険の費用が増大し、社会全体を非効率にしています。時代を担う若い世代への教育に予算を割いたり、必要なインフラを整備して社会的な効率を上げる、そういった将来への投資が難しくなるということです。
これは誰が悪いという話ではなく、社会の必然です。
また、日本を見てもそうですが、社会全体が高度に発達してくるとどうしても無駄が増えます。効率化されるはずが、逆に非効率を生み出す側面があるということです。例えば日本を見てみても不要な文書、不要な会議にあふれていますね。
前例が積み重なるというのはそういうことで、「昔はこうだった」「前はこうやっていた」という路線に乗ると責任が回避されるので楽なのです。これは現状を維持するには楽な仕組みですが、何か新しいことを生み出す力にはなり得ません。
戦後の日本において産業構造の変化が全く起きないのは、そういう側面もあると私は思っています。ここまで極端でなくとも、ヨーロッパの先進国の多くは高止まりする失業率に苦労していますし、世界で通用するような多国籍企業は古く伝統ある企業が多いですね。産業構造の変化がなかなか起きにくいのは、ヨーロッパも同じだということです。
そういう意味では移民というのは大きなイノベーションを起こす可能性があります。しかし、文化的な対立や信条の違いなどを解決するには時間と誠意が必要にななります。そのため、違う面での困難さがありますね。
ただし、個別株では面白い企業がいくつもあります。ここでの話はあくまで指数に限ったことですね。また、冒頭で書いたように国際分散投資を志向するならば大いに妥当性はあります。
新興国に関しては、この10年で言うならば、たびたび株価は下落しています。特に中国株においてそうですが、今は再び妙味が増しています。
永続保有という観点ではなく、うねり取りという意味では私も新興国との相性は悪くないので、チェックはしています。新興国株に関しては、関連記事にも上げておきますのでご参考になれば幸いです。ご質問ありがとうございました。
関連記事です。
MSCIコクサイに関しての記事です。
米国株の中でも顕著に強弱がはっきりしているのがアフターコロナの現状です。
大型グロース全盛の時代を迎えています。この、大型グロースはほとんどイコールで米国企業ということになります。