仮想通貨バブルには資本主義の原理原則が詰め込まれていた
2017年末に投資界隈をにぎわせた仮想通貨も、だいぶ落ち着きを見せています。チャート的には殆ど終わっており、金融庁が入って極端なアフィリエイトビジネスも展開しにくい状況です。
こちらは2012年からのビットコインのチャートです。2017年末に向けて上昇し、そして2018年に入り急速にしぼんでいます。中でも目を引くのが11月末から12月上旬にかけての値上がりで、2週間で2倍以上になっています。
バブルというのは最後のひと花がもっとも輝く、ある意味では夏の花火のようなものです。そういう意味では1ビットコインが220万円まで上昇したというのは多くの人に夢を、そしてバブルの現実を伝えたのではないでしょうか。
こちらは人気ナンバー2のイーサリアムです。イーサリアムも長期のチャートだと殆どビットコインに連動することが分かります。ただし、値動きに関してはビットコインよりも激しいですね。そして、ビットコインよりも反発が弱いです。
こちらは3番目にメジャーなリップルです。こちらも2017年11月下旬から跳ね上がり、急速にしぼんでいます。高値圏においては大きなしこりを残しています。仮想通貨もマイナーになればなるほど、反発らしい反発がありません。
仮想通貨に関しては株式業界におけるような逆相関というのはほとんど存在せず、おおむね似たような動きをします。仮想通貨の特徴の一つと言ってよいでしょう。また、株式と違い、ファンダメンタルズはあまり価格形成に寄与しないのも特徴でしょう。
逆に言うと、だから風評を流しやすいのです。そういう意味では、情報を持っている側、資金力があり相場を動かせる側に有利な相場になりやすいということです。
急速に膨らみ、急速にはじけたという意味において学びの深い現象でした。
同時に、株式でいうとメタップスやリミックスポイントといった、往年の仕手を思わせる買いあおりもありましたね。日本株はいつもちょっとした話題に買いあおりが付き、いなごが群がる状態になります。
誰が買いあおっていたのか、その結末はどうだったのか。それを踏まえて次に進まないと同じ事を繰り返しますね。そのような株に飛び乗り、飛び降りというトレードをしている限り、なかなか資産形成はできないということです。
やはり、ある程度は決算を見て、財務諸表の基礎を押さえておかないと、根拠のない風評に踊らされ続けるトレードになります。雰囲気で株取引をするというのは、そういうことです。日本株はこの傾向が顕著です。
仮想通貨バブルは2000年代3つめのバブルだった。
2000年代に入ってから、3つのバブルらしきものがありました。
- 2000年前後のITバブル
- 2007年前後の住宅バブル
- 2017年の仮想通貨バブル
2000年前後のITバブルにおいては、IT業界の成長性や可能性が実態以上に株価を上げてバブルを演出しました。Nasdaq総合指数はこの時の高値を超えるのにおよそ15年かかっています。
2007年の住宅バブルにおいては、住宅価格の上昇と過度なリスクを負ったサブプライムローンが端緒となり、金融危機が起きました。根本の部分では過剰な不動産融資がはじけた日本の1989年バブルと似てなくもありません。
2017年は仮想通貨バブルが起きました。これは、個人が広くかかわっており、金融機関などが殆ど関わっていないという意味において特徴的でした。個人は相当痛んでいるはずですが、金融機関が関わっていないので景気との連動性は見られません。
いつの時代もそうですが、最後の尻馬に乗る個人はいつも大きな痛手を被ります。
仮想通貨バブルの大きな特徴
仮想通貨バブルの大きな特徴がありました。これについて触れておきたいと思います。
- 誰もが具体的な実態を知らなかった
- 法人が殆ど関わらなかった
- ネット業界を中心とした盛り上がりを見せた
こういう特徴がありました。
誰もが仮想通貨の具体的な実態を知らなかった
仮想通貨のアーキテクチャに関わる中心的な人物は知っていたかもしれませんが、殆ど世界中の人たちがその具体的な実態は分からないままでした。いろいろな可能性があり、それを感じさせる風評も流れてくるのですが、具体的な利益、目に見える実績、それが何なのかあいまいとしたままでした。
逆にそれが大きな成長性と期待をさせるもので、多くの資金を呼び込みました。株式が中心になるバブルも似ている部分はあるのですが、もう少し数字で示される情報が多いので新しいバブルを感じました。
ある意味では良く言われるように、かつてのチューリップバブルに似たものかもしれません。商品系のバブルに似ていたということです。後付けでもっともらしい理由がつけられるということです。
大手法人が殆ど関わらなかった
ITバブルにしても、不動産バブルにしても、中心はIT企業や金融機関などの法人格が存在します。最終的には融資を付けすぎた金融機関が大きな痛手を被るのですが、仮想通貨バブルではそういうことはなく、個人が大きな痛手を被りました。
ただ、仮想通貨界隈の参加者は投資歴が短いケースが多く、信用売買まで手を染めている人が少なかったのが傷を浅くしたように思います。現物での売買というのはそういうことで、再チャレンジを可能にする基本的な取引ですね。
ネット業界を中心とした盛り上がりを見せた
個人的にはこのネット業界中心というのが大きな特徴だったと思います。また、私たちに多くの示唆を与えてくれたのもこの部分です。
仮想通貨は「セミリタイア」をした著名なブロガーやインフルエンサーと呼ばれる人たちが広く絶賛しました。その価値に魅力を感じただけではなく、アフィリエイトと呼ばれる広告収入が巨額だったからです。
例えば、1口座開設すれば1.5万円から2万円、アフィリエイトとして入金される。このような仕組みです。あるいは、口座開設した後の取引のたびに手数料の一部をアフィリエイトとして還元する、そのような仕組みがありました。
これが非常に人間心理に強く作用しました。信頼できる人が紹介している、しかも仮想通貨の価格が上がり続けるので、「儲かる」というエビデンスをしっかりと示せるわけです。仮想通貨業者は現在の広告事情を非常に上手に活用したと言えます。
さらに一役買ったのが検索システムです。仮想通貨の記事で検索上位に示されるためには、検索上位に来るだけのサイトの強さ、そしてスキルが無いとできないことです。インフルエンサーのサイトの強さ、それからスキルがうまくかみ合いました。
ある意味では、Google先生などのサーチエンジン各社も仮想通貨バブルに関わったと言えるかもしれません。信頼できる情報にどのようにアプローチして、自分なりに消化するのか、そういう課題を示してくれました。
その後の個人ブログやアフィリエイトサイトが殆ど全滅したのは、この反省があったのでしょう。ちなみに、転職サイトやFXサイト、ブログのワードプレスのサイトも大なり小なり似たような側面があります。
夢ある限り、まだまだ終わらないバブル
人間心理に強く作用するバブル。現代社会において、このバブルというのは非常に起こりやすい環境になっています。それは、メディアの中心がテレビや新聞などから明確にインターネットに移りつつあるからです。
言うまでもないかもしれませんが、インターネットの良さである双方向性というのは同時に「主体性の無さ」です。そのため、正しいか正しくないか不透明な情報が拡散されるという特徴があります。
仮想通貨バブルを見る限り、バブルが生成されるスピードは以前より早く、そしてしぼむスピードも速くなっています。儲かりそうだと思ったら多くの人が乗り、先行者利益を得るために広告料を媒介として拡散をする。
どのタイミングで降りるかは難しいところですが、うまいところで降りられた人が大きな利益を得る。尻馬に乗る人は火傷をする。その原理原則は揺るがないところです。
次のバブルは新旧含む仮想通貨かもしれませんし、全く別の魅力ある新商品かもしれません。
いくつかのセミナーでもお話しましたが、資産が無いうちはリスクを取らなくては資産を増やせないのも事実です。そういう意味では多くの人たちが魅了されたのは心情的に非常に分かります。
仮想通貨バブルの堅実な勝者は誰だったのか。それを考えるだけでも次のバブルでの姿勢が決まってくるように思います。
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どの投資対象でもフルインベストは傷口を大きくします。ただし、大きく得られるのも事実です。
仮想通貨バブルでは、こまめに利確をしていた人は逃げきっています。しかし、雑所得になるという税制が利確を躊躇わせましたね。仮想通貨は法人で買わないと税制面での負担が大きすぎます。
暴騰、暴落はどのようなアセットにもありますね。米国株は安定的ですが、変化に柔軟に対応したいところです。