京大川北/JPX日本株指数はパッとしない日本株指数を変えるか
2023年1月30日から算出を開始した日本株指数があります。「京大川北/JPX日本株指数」です。
京都大学経営管理大学院、証券投資研究教育産学共同講座とJPXによって開発されたものです。
日本株指数として思い浮かべるのはTOPIXあるいは日経平均株価でしょうか。機関投資家であれば配当込みのTOPIXを使うことが多いと思います。正直、このどちらも「儲かる指数」とはいいがたいです。
TOPIXはTokyo Stock Price Indexの略で、東証株価指数のことです。2022年4月の東京証券取引所の新市場区分移行までは、東証1部上場の全銘柄を対象として、各銘柄の浮動株数に基づく時価総額加重平均株価指数です。
この全銘柄というのが曲者で、大赤字企業であろうと、上場している限りは指数算出の対象になります。
日経平均株価は日本経済新聞社が発表している株価指数です。東証プライム市場上場銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されている株価ベースの指数です。こちらはセクターバランスと流動性が選定要件のため、やはり業績は考慮されません。
つまり、残念ながら「代表的な日本株指数を持っていれば儲かる」とはいいがたいのです。この事実は、世界からお金が集まりにくく、なおかつ海外投資に個人投資家が血道を上げる遠因となっていると言えるでしょう。
一方、「京大川北/JPX日本株指数」はTOPIXとも日経平均株価とも性格を異にする株価指数です。米国株価指数のS&P500と比較しながら、その性格を把握しましょう。
以下「京大川北/JPX日本株指数」を「川北/JPX」と略して表記します。
京大川北/JPX日本株指数とS&P500を比べてみる
「川北/JPX」は原則200銘柄で構成されます。なお、上場市場は東証であれば問いません。
なお、「金融業」は「川北/JPX」に採用されません。S&P500には例えばJPモルガン・チェース【JPM】やゴールドマン・サックス・グループ【GS】などの金融業が採用されていますが、「川北/JPX」は東証33業種の「銀行業」、「証券、商品先物取引業」、「保険業」、「その他金融業」に分類される企業が対象外です。
時価総額基準も違います。S&P500に採用される時価総額最低水準は、随時変化します。2023年時点で、127億ドルです。1ドル135円で換算して約1兆7千億円以上です。
一方、「川北/JPX」は浮動株ベースの時価総額が母集団全体の0.015%以上であることと定めています。結果、算出開始時の採用企業の中には2000億円未満の企業もあります。
ウエイトのルールも違います。S&P500はいわば浮動株ベースの時価総額加重平均です。「川北/JPX」は銘柄入れ替え時に原則等ウエイトになるよう調整されます。
京大川北/JPX日本株指数の銘柄採用指標
採用銘柄を判断する指標を見てみましょう。S&P500の採用基準指標をざっくり言うと以下の通りです。
- 時価総額
- 流動性(浮動株の比率や売買高)
- 最低4四半期以上最終黒字
- IPOから1年以上経過している
- 米国企業である
「川北/JPX」は銘柄選定の指標に以下の6種類を用い、最初の4つに関しては、変化を追う、一時点だけで判断しないなどのルールがあります。
- 売上高成長率
- 売上高営業利益率
- 総資産営業利益率
- ROE
- 自己資本比率
- 海外売上高比率
TOPIXや日経平均株価と違い、「継続的にしっかり稼げて、財務も悪くない企業を選定」しているように見えます。
「長期投資の視点から、優良かつ成長する企業を選別する」ことを目的にしているそうで、非常にいい傾向だと感じます。
S&P500は3の倍数の月、年に4回です。4四半期以上最終黒字という基準がある故、このようなルールなのでしょう。「川北/JPX」は年に1回7月のみです。
京大川北/JPX日本株指数のチャート
算出開始から日が浅いですが、非常にいい船出をしています。2023年に入ってから日本株市場が活況で、このチャートと同期間のTOPIXは+4.47%ですから、若干behindはしています。
しかし、パフォーマンスの優劣をつけるには期間が短く、時期尚早でしょう。
出典: JPX総研
「川北/JPX」の算出要領にはっきり記載されていることがあります。インデックスの算出は「終値」のみということです。
出典:京大経営管理大学院website
連動商品を否定はしていないが、現在はまだない
算出開始から日が浅いこともあり、「川北/JPX」に連動した投資信託やETFはありません。
そもそも終値しか算出しないというルールを変えない限りETFは組成できません。投資信託であれば1日1回の値があればいいので、商品組成が可能です。
算出要領においても、それを妨げるようなものはなく、ライセンス契約を結べば作れると解釈できます。
出典:京大経営管理大学院website
京大川北/JPX日本株指数は右肩上がりの日本株指数になれるか?
正直、イコールウエイトで200銘柄によって組成するのは銘柄数が多いようにも感じます。
しかし、「川北/JPX」のパフォーマンスが今後も良好であれば、当然日本株運用にもいい影響をもたらすでしょう。
また、今後、「川北/JPX」の銘柄入れ替えに注目する日本株運用者が増えるのではないかと考えます。入れ替え予想をする証券会社も出てくるでしょう。いずれにしても、使い方に一工夫必要な日本株指数に何らかの変化が生じると良いですね。
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