不動産投資を行う上で重要なキャッシュフローとは
キャッシュフローとは現金の流れのことをいいます。一定期間内の収入と支出の動きそのものを指すこともありますし、収入から支出を差し引いた残りの金額のことを表すこともあります。キャッシュフローが把握できていないと健全な経営ができません。
身近なものでたとえると、家計を考えるとわかりやすいのではないでしょうか。給料が毎月いくら入るのか、家賃や通信費などの固定費をいくら支払うのか、食費や娯楽費などの変動費にいくらぐらいかかるのか。
その結果、最終的に手元にどのくらいの現金が残るのか。こうしたことを考えるのがキャッシュフローです。
不動産投資におけるキャッシュフローとは
不動産投資においてのキャッシュフローは家賃収入と経費の差を意味します。賃貸経営で大切なことは、安定した家賃が得られること、家賃のなかで経費をまかなえることです。そのうえで手元に残る現金をどれだけ多くするかを考えていく必要があります。
不動産投資でキャッシュフローが重要視される理由としては、主に次の2つがあげられます。
- 事業継続
- 事業拡大
具体的に見ていきます。
①事業継続
投資用物件の購入には不動産投資ローンを利用し、家賃収入の中から返済していくのが不動産投資の一般的なやり方です。
しかし、運用中には入居者がつかず空室となったり滞納があったりして、家賃収入が思うようにいかないことも起こりえます。その場合には、手持ち資金をローンの返済に充てるしかありません。
十分な手持ち資金がなければ自己資金を充てることになり、生活費にも影響します。また、給湯器やエアコンなど住宅設備の故障により、突発的な修繕が必要になることもあります。投資用物件の修繕はオーナーの責任で行わなくてはなりません。この際にも十分な資金がなければ自己資金から捻出することになるでしょう。
資金繰りが苦しくなれば物件を手放すしかありません。つまり、投資の失敗を意味します。そのため、表面利回りはあくまで理想、キャッシュフローはコンサバに、経費はやや大きめに見ておく必要があります。
しかも、不動産は買ったときが一番キャッシュフローが良く、徐々に宿命的に建物が減価し、家賃も減るのが一般的です。
②事業拡大
少しずつ物件数を増やし、最終的には家賃収入だけで生計を立てたいと考えている人も多いでしょう。月々のキャッシュフローがプラスであり手元に十分な現金が残れば、それを元手にして次の物件を購入することも可能です。
不動産投資の魅力のひとつは、少ない資金で資産を増やせること、いわゆるレバレッジ効果を活かせることです。
今の規模が小さくとも、キャッシュフローを作るところから始め、融資を使った1棟アパートやマンションのオーナーになることも夢ではありません。
物件の収益性をチェックするには
初心者さんがシンプルに物件の収益性を判断するには、次の指標は最低限押さえておきたいところです。
①利回り
利回りは物件情報などにも記載されているため、ご存じの方も多いでしょう。投資の世界では、投資金額に対して年間にどれくらいの利益が得られるかを割合で示したものです。
不動産投資における利回りには表面利回りと実質利回りの2種類があり、物件情報に記載されるのは表面利回りです。そのため、算出根拠の家賃は適正か、エリアの競合はどうなっているか、考える必要があります。
ありえない建築費などもそうですが、たちの悪い業者はこのあたりの数字をもりもりにしています。逆に言うと、算出した数字とかけ離れた提案をしてくる業者はそういうモラルの業者であるというフィルターをかけられます。
②イールドギャップ
イールドギャップとは投資利回りと長期金利の差を示す割合です。不動産投資の場合、同じ利回りならローンの金利が低いほうが、反対にローン金利が同じなら利回りの高いほうが投資効率が高く、レバレッジ効果が大きいと判断されます。
キャッシュフローの計算方法
キャッシュフローの計算方法はシンプルに次のとおりです。
- 家賃収入-(ローン返済+経費)
経費や空室率は立地、築年数、管理など変数で大きく変わります。というと、初心者さんに全く参考になりませんからあえて言うと、ざっくりこみこみ25%ぐらいを織り込んでおくと良いでしょう。
不動産投資で経費として認められる費用項目には次のようなものがあります。
- 固定資産税などの税金
- ローンの金利
- 管理委託費
- 火災保険などの保険料
- 修繕費
- 管理費、修繕積立金(マンションの場合)
- 司法書士や税理士への報酬
- 仲介手数料
- 不動産事業にかかった費用(交際費、通信費など)
今のキャッシュフローを更に改善するには
キャッシュフローを今より改善するには、収入となる家賃を高めに設定するか、支出となる経費を抑える必要があります。
ただし、家賃を高めに設定して入居者がつかなければ家賃収入は得られません。まずは経費となる月々の支出を減らす方法を検討しましょう。
月々の支出の見直し方法は、ローンに関することと、管理委託費に関することに分けられます。
① ローンの見直し
1.繰り上げ返済をする
繰り上げ返済は資金がある方にとっては有効な方法です。繰り上げ返済によって残りの期間のローン返済額を減らしてキャッシュフローを改善することも可能です。
しかしながら手元資金を活用することになるため、繰り上げ返済後の手持ち資金との兼ね合いで判断するようにしましょう。入れた金額のわりにキャッシュフローが改善されないケースもあります。
2.借り換えをする
もし現時点で高い金利で借り入れしている場合には、借り換えによって金利を下げることや、ローン期間の見直しをすることも可能です。
複数銀行を比較して低い金利で借り換えできるインベース(PR)という不動産投資ローンの借り換えサービスがあるので、利用してみるとよいですね。特に最初のローンを引くときは高いことが多いため、あとから実績を積んでくると好条件を引き出せることがあります。
私も実際に2.475%から0.775%への借り換えを実行しています。
②管理委託費の見直し
管理委託費の相場は3~5%です。5%の方は更に安くならないか管理会社を回ってみても良いかもしてません。ただし、安すぎるとクレームなどの対応が悪いことや、入居時の対応に影響が出る可能性もあるので慎重に検討しましょう。
また、築古や立地が悪いなど世話の焼ける物件の場合、管理会社から手切れを言い渡されるケースもあります。お互いにビジネスパートナーを選ぶ立場だということです。
キャッシュフローがマイナスにならない物件を購入する
そもそもキャッシュフローがマイナスになる物件を購入しないことも一つの手です。資産が大きくなり、余裕を持ったうえで大きなキャピタルが狙える物件を買う場合は別ですが、資産形成期においては違いますね。
事前のシミュレーションはそういう意味でも大事です。
例えば、新築物件と中古物件を比較すると新築物件の方が価格が高くなり利回りも低くなってしまいます。結果的にキャッシュフローがマイナスもしくはプラスマイナスゼロとなる傾向にあります。
新築物件であっても頭金を多く入れる、融資年数を伸ばす、もしくは繰り上げ返済をする。これらによりキャッシュフローの改善をすることはできますが、今後の事業拡大を見越してどのように運用するかをよく検討しておく必要があります。
また、中古物件の場合は、築年数によってローンの年数が大きく変わりますので注意が必要です。物件ごとの法定耐用年数は、以下の通りです。
- 木造:22年
- 鉄骨造(厚さ3mm以下):19年
- 鉄骨造(厚さ3~4mm以下):27年
- 鉄骨造(厚さ4mm超):34年
- 鉄筋コンクリート/鉄筋鉄骨コンクリート造(RC):47年
念のため国税庁のWebサイトでも確認するようにしてくださいね。
銀行ごとに築年数と不動産投資ローンの期間については考え方が異なります。また1981年以前か以後によって耐震基準も変わります。1981年以前の物件ですと旧耐震物件になるため期間はおろか、不動産投資ローン活用のハードルも大きく上がります。
例えばRC造で築37年の物件の場合、耐用年数が残り10年になるため一般的には不動産投資ローンを長期で借り入れすることも難しくなるでしょう。
中古物件でも、特に築古物件は表面利回りが高くなる事が多いですが、その分不動産投資ローンの金利が上がり、貸出期間も短くなることからキャッシュフローの悪化が起こり得ます。経営全体のバランスによりますが、資産形成期においては特にローン条件に注意しましょう。
不動産投資を行う上で重要なキャッシュフローまとめ
キャッシュフローは投資が順調かどうかを確認するための1つの指標です。プラスのキャッシュフローがキープできれば安心して賃貸経営が継続でき、不動産投資事業の規模を拡大していくこともできます。
反対にマイナスが続くようであれば、早めにプラスに転換させないと規模の拡大が難しくなります。月々のキャッシュフローを把握し、ローンの借換え(PR)などより多くの現金を残せる運用方法を考えていくのが経営の醍醐味でもありますね。
資産運用は数字の増減を楽しめ、誰もが取り組める最高のゲームなのです。
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規模拡大にあたって、うまく資産の入れ替え、融資の借り換えを活用したいですね。
株式投資と不動産投資の相性はとても良いですね。