ドイツ銀行(DB)は今、世界で最も注目される銀行
ドイツ銀行の経営をめぐって昨今騒がれています。2年前のチャイナ危機時にも騒がれ、今回のイタリア債券の騒動を巡って再び注目されています。
ドイツ銀行はリーマンショック前に派手にデリバティブ関係の商品を扱ったために、現在も多くの不良債権を抱えることになっています。そのため、米国子会社はFRBストレステストに合格していません。また、中国投資が焦げ付きおよそ1兆円の損失があるとも言われます。
そんな不安を抱えるドイツ銀行ですので、ここ数年非常に注目されています。改めて大きく注目されるきっかけになったのは、住宅ローン担保証券(RMBS)の不正販売を巡って米国・司法省から140億ドルの罰金を求められたことです。もともと苦しかった経営が、改めてクローズアップされました。また、最近ではメルケル首相がドイツ銀行への政府の支援に対して消極的な発言をしたことから、より株価は軟調です。
ちなみに住宅ローン担保証券(RMBS)とは、つまり信用の低い住宅ローンをリスク分散の意図で証券化したものです。これが破たんし、ひいてはリーマンショックを招くことになりました。
※ドイツ銀行のページから
ドイツ銀行はこの住宅ローン担保証券(RMBS)をかなり扱っていたので、リーマンショックでは大きな痛手を負いました。そして、リーマンショックの後遺症から未だに立ち直れていません。
ドイツ銀行はフランクフルトを拠点とするドイツで1番の規模を誇るメガバンクです。2012年までは世界の銀行総資産ランキングで1位でした。現在も上位にあります。日本で言うと、東京三菱UFJ銀行とほぼ同規模です。
念のため、中央銀行はドイツ連邦銀行です。ドイツ銀行は民間金融機関です。
かつては商業銀行として堅実な営業をしていましたが、1990年中ごろから投資銀行業務に精を出すようになりました。リーマンショックまでは投資銀行というのは錬金術師の代名詞のようなもので、地味な商業銀行からすると輝いて見えました。
ドイツ銀行業界ではドイツ銀行が圧倒的に資産額でトップ、次点でコメルツ銀行です。かつてはドイツ銀行、コメルツ銀行、ドレスナー銀行がトップ3として知られていました。ドレスナー銀行は2009年にコメルツ銀行に買収されて消滅しています。
ちなみに次点のコメルツ銀行も本拠はフランクフルトです。3位のDZ銀行もフランクフルトですから、金融都市といわれるだけあります。
ドイツ銀行(DB)の配当とチャート
2007年 株価151ドル 配当4ドル
2016年 株価 12ドル 配当 無配
2018年 株価 11ドル 配当0.129ドル
10分の1以下まで株価が下がっています。2016年には無配に転落しています。無配になるのは第二次世界大戦後初のことです。あの戦後の苦境でさえ配当を出せていたことを考えると、未曽有という言葉どおりの経営状況と言えます。復配こそしましたが、以前とは比べ物にならない額です。
なかなかボラティリティが高く、腕に自信のある逆張り投資家が何か起きるたびに参入しています。前回2016年の暴落の際には短期で立ち直り、2倍になっています。さて、2018年はどうでしょうね。
ドイツ銀行(DB)の基礎データ
ティッカー:DB
本社:ドイツ・フランクフルト
上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)
ドイツ銀行【DB】の配当
では、基礎データを見てみましょう。
リーマンショック後の大減配のあと、なんとか配当を継続していましたが、2016年にとうとう無配に転落しています。2017年になんとか復配しましたが、厳しい状況は続きます。
ドイツ銀行【DB】のBPSとEPS
EPSは非常に苦しく、この数年でも殆どマイナスかわずかな利益に留まっています。経営状況の厳しさ、しばらく続いているEU圏内における低金利が影を落としています。ボラティリティのみで買える株と言えるでしょう。
ドイツ銀行【DB】の売上と利益
2015年にはおよそ68億ユーロの赤字を出しています。それから3年間赤字続きです。実にこの10年で4回の赤字です。赤字幅は縮小しつつありますが、これも今後の経済状況次第ですね。
ドイツ銀行【DB】の株数とROE
経営状況を反映して株数は右肩上がりです。価値は10年で3倍以上希釈化されています。
ドイツ銀行はCOCO債という自己資本比率が低下すると株式に転換される債券を発行しています。これが転換されるとさらに激しく株価に影響を及ぼします。2016年2月にもCOCO債を懸念した株価の下落がみられました。要は、株主もドイツ銀行の経営に対して疑心暗鬼になっているので、不利な材料が出るとぶれるのです。
性質は違いますが、希薄化という意味では2003年前後の日本で乱発されたMSCBや増資爆弾を思い出します。
時価総額を超える3000億円のMSCBを発行した双日、MSCBではないですが30%を超える希薄化を行ったみずほ銀行、減資&増資という荒業を使った沖電気、100%減資を行った日航などは投資家は覚えておいたほうが良いでしょう。
いずれも「株主責任を負わせる」という名目で行われたものです。これだけ安易に株主の財産を著しく毀損する増資が乱発される市場は、先進国では日本市場をおいて他にありません。
ドイツ銀行の経営状況は大規模な資本注入が無い限り変わりません。また、ヨーロッパ各国政府の金利政策が転換しない限り、収益性が改善することもありません。したがって、今後不安材料が出るたびに株価は弱含むでしょう。
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ゴールドマンサックスの記事です。投資銀行としての実績は世界最高レベルです。
バンクオブアメリカです。こちらも一時期経営危機が騒がれましたが、復活しつつあります。特に、金利高の恩恵を大きく受ける銀行と1つと目されており、バフェット銘柄に加わりました。
カリフォルニアの地銀という枠を超え、リーマンショックで規模を大きく飛躍させました。不祥事がありつつも、盤石のバフェット銘柄です。