トラッキングエラーとは
トラッキングエラーとは、連動先の指数(ベンチマーク)との乖離のことを言います。例えば、S&P500連動のETFが、S&P500と違う値動きをしてしまうようであれば、トラッキングエラー、つまり乖離ということになります。
もしトラッキングエラーが大きいならば、そういう商品は私たち利用者が狙った利益を取れません。つまり、あまりよくない商品ということになります。ただし、評判の良い投信、あるいはETFでも起きる可能性はゼロではありません。
有名な例としては、個人投資家に人気のある投信、ニッセイ外国株式ファンドが比較的大きなエラー(約0.21%)を2016年大統領選時に起こした例がありました。ニッセイ外国株式ファンドのトラッキング先はMSCIコクサイです。
ニッセイ外国株式ファンド自体は信託報酬の低い、非常に人気のある、そして定評あるファンドです。それでも起きてしまうということでちょっとした話題になりました。
日系の海外投資商品はどうしても運用総額が限られるので、急激な資金の流出入に伴うトラッキングエラーはある意味つきものと思っておいて良いでしょう。このことを踏まえて、トラッキングエラーと上場廃止についての質問をご紹介します。
東証上場ETFのトラッキングエラーと上場廃止への質問
たぱぞう様
お世話になります、choco0202と申します。
いつも大変楽しみにブログを読ませていただいております。これからもたぱぞう様のファンであり続けます。
2017/07/17の記事
「1557・S&P500ETFを買う理由、買わない理由」記事について、2点質問がございます。
機関投資家の影響について
最後の1557が不人気の理由ですが、やはり機関の買いが入らないのが大きな理由の1つでしょう。機関は直接SPYを買うでしょうから、やはり円貨での1557はマイナーだということです。
1557はSPYと連動する設計のため、SPYに買いが入れば実質1557に買いが入ったことと同義だと思っています。
つまり、結局は気持ちの問題であって「どちらを買っても正解」ということになりますでしょうか?
東証上場ETFが上場廃止になったらどうなる?
外国企業の東証からの退場が相次いでいますよね。例えば、今年になって撤退したバンク・オブ・アメリカは出来高が少なかったことが要因だとコメントしています。
また、東証に上場するデメリットとして「日本語での開示資料の作成、年間上場料などの負担」があったそうです。たぱぞうさんのご指摘の通り、1557は出来高が極めて少ないことから、将来的に東証上場廃止の懸念があると思っています。
- 上場廃止の可能性について
- 廃止された場合にどうなるのか
お手数ではございますが、たぱぞう様の見解をご教示いただけると幸いです。
SPYと1557のS&P500との連動について
まず、SPYと1557の連動ですが、これはトラッキングしている指数であるS&P500との連動を目指しています。ですので、おっしゃるようにSPYや1557に買いが入れば、その資金は間接的にS&P500構成銘柄に向かうことになります。
ただし、1557は出来高が非常に少ないですから、極端に多い売買が入れば、指数からかい離した値が付く可能性はあります。それが、トラッキングエラー、乖離ということになります。もっとも、1557はそうした乖離が少ないほうだと私は思っています。
先述したように、東証上場の日系ETFは指数との乖離を示すことがままあります。例えば原油ETFもそうですし、各国ETF例えばロシアETFの1324もそうです。原油相場に連動させて買いたい、ロシア市場に連動させて買いたい、こういうときにきちんと連動してくれないと意味がありません。
ただし、先日参加した東証さん&MSCIさんの勉強会によると、東証はこのようなトラッキングエラーを最小あるいは無くすためにマーケットメーカーを広く導入していこうという流れのようですから、今後改善されるかもしれません。
マーケットメーカーというのは、簡単に言うと「適正価格調整屋さん」です。裁定取引によって、適正価格に導くということですね。
現在の比較だと、米国市場上場の指数連動ETFは極めてきちんと連動してきますから、読みがはまればぴたりと利益を取れます。東証上場のものを買うならば、マイナーな指数を追う場合は出来高を見て参戦したほうが良いですね。
東証上場ETFの上場廃止とその対応
次に、上場廃止懸念です。およそ10年前までは東証上場のETFの廃止ということがわりとありました。これは、受益者が大証で500人以上、東証で100人以上と決まっており、マイナーな指数だと受益者数、つまり買い手が満たせなかったからです。
しかし、現在この縛りは廃止されており、利用者数の少なさに抵触することによる上場廃止はなくなりました。また、あったとしても1557レベルのETFでしたら、その懸念は極めて少ないです。それなりに出来高がある、つまり受益者がいるからです。
それでも、運用会社が廃止申請を出し、上場廃止となるケースがあります。1557レベルではまずないでしょうが、あまりにマイナーだと上場コストがかかりますからそういう選択をすることがあります。
その場合は、整理銘柄扱いになり、一定の期間を経て廃止になります。整理銘柄中に売却するか、上場廃止後に運営会社から償還してもらうという流れになります。後者は手間ですから、通常は整理銘柄中に売却してしまいますね。
ご質問ありがとうございました。choco0202さんも投資ブロガーということで、今後ともよろしくお願いします。
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元記事はこちらです。
米国株投資入門ということで書きました。
この安定感がS&P500の魅力の1つでしょう。