グローバルソブリンオープンという懐かしの投資信託
2000年代はある意味では株式冬の時代と言ってよく、多くの個別株はもちろん投資信託も冴えない展開が続きました。ノムラ日本戦略ファンドに引き続いて懐古的なファンドをご紹介します。
今でこそ株式は債券を上回るパフォーマンスを示すということが常識になっています。債券はリターンを期待するというよりは、ディフェンシブさが求められており、短期債などはその代表格と言っていいでしょう。
株式が優位であるという常識、このことに確信が持てないぐらいに相場環境が悪かったのが2000年代でした。ある意味では2010年代の好況というのは、その時代を取り戻すかのようです。
The darkest hour is just before the dawn(夜明け前が一番暗い)、とは言ったものです。2000年代後半に起きたリーマンショックは、結果としては強烈なあく抜きのような形になりました。
この2000年代にあって、もっとも人気がある投資信託だったのが「グローバルソブリンオープン」です。いわゆるグロソブと呼ばれるもので、相場歴の長い人ならば殆どすべての人が知っているのではないでしょうか。
グローバルソブリンオープンとは
ソブリン債というのは、国や政府機関が発行している投資適格債券のことです。グローバルソブリンはAAA格から低くともA-ぐらいまでの債券を投資対象としています。そのため、債券投資としては比較的固いと目されていました。
※https://www.am.mufg.jp/pdf/geppou/148013/148013_201806.pdf
ベンチマークはFTSE世界国債インデックスです。インデックス投資といえば、インデックス投資でしょうか。設定来で分配金込だと1.8倍になっています。20年ちょっとで1.8倍ということです。
リーマンショック時でも2割程度の落ち込みなのは注目されてよいでしょう。そのころが運用総額の頂点で、実に6兆円をうかがう勢いでした。しかし、その後じりじりと運用総額を減らし、4800億円にまで落ち込んでいます。それでも大きいですね。
ベンチマーク自体はしっかりしたものを採用しているにも関わらず、なぜこのような憂き目にあってしまっているのか。そこを考えてみましょう。
グローバルソブリンオープンの人気が失われた理由
相場環境の悪かった時に持て囃されたグローバルソブリンですが、2010年代半ばに入ると完全に過去の投資信託になってしまいました。いくつか理由がありますので、考えてみたいと思います。
- 基準価額が下落一辺倒である
- 信託報酬が高すぎる
- 投資家の目が肥えた
- そもそも債券は多くの投資家にとってサテライト
このような理由になります。
基準価額が下落一辺倒である
まず、基準価額が下落一辺倒です。売り出し時が10000円、20年を経た今は4000円台です。これは見ての通り毎月分配をして元本を削っているからですね。設定来で分配金を8806円出しているというのは20年の重みでしょうか。しかし、配当再投資どころか元本を削るので、当然パフォーマンスがあがりませんね。
そのためにベンチマークから大きく劣後してしまっています。ベンチマークは繰り返しますがFTSE世界国債インデックスです。悪くありません。
信託報酬が高すぎる
昔の投資信託にありがちですが、コストが高すぎましたね。
- 購入時手数料:上限1.62%(税抜 1.50%)
- 信託財産留保額:0.5%
- 運用管理費用(信託報酬):年率1.350%(税抜 年率1.250%)
もともとリターンの薄い債券投資信託ですから、これだけ抜いてしまうときついですね。ちなみに、信託財産留保額というのは、解約時にかかる手数料です。長期保有をしてもらうために、解約時にも手数料をかけておこうというものです。名目上はそのことによって長期にわたる投資をしてほしいということですね。
ただ、だからといって長期投資に耐える投資信託かどうかは別問題で、要は往復でコストを取れるところから取っておこうということですね。昔の投信はこのような仕組みのものが非常に多かったです。
投資家の目が肥えた
投資家の目が肥えました。今はテレビやラジオ、新聞に変わり、インターネットメディアが繁栄しています。特に2010年代になってからはスモールスクリーン、スマホやタブレットがメディアの中心になりました。
これは従来の一方的な情報の垂れ流しから、双方向による情報の吟味が可能になったことを意味します。今は新たな投資信託がリリースされればすぐに投信ブロガーたちが「揉み」ます。つまりはそういうことですね。
そもそも債券は多くの投資家にとってサテライト
そもそも債券投資は多くの投資家にとってサテライトで、ペーパーアセットの主流は株式投資ですね。あえて債券投資をコアに据えることもないので、歴史的な役割を終えつつあるということですね。
続いて、グローバルソブリンオープンの功罪について僭越ですが書いてみます。
グローバルソブリンオープンの功罪
グローバルソブリンオープンはリーマンショック前後に多くの人が所持していたということに意味があると思います。先にご紹介した日本株戦略ファンドなどと違い、債券ですからディフェンシブさは相応に発揮されました。
特に投資初心者だった人たちの資産を「それなりに守った」のは間違いないところです。意図的だったかどうかは別にして、それは評価されていい部分だと思います。
一方で、せっかく優れたベンチマークを用いながら、運用成果で全くトラッキングできなかったのは残念なことです。高信託報酬で毎月分配をすることでこうなるのは自明だったはずですが、目先の利回りを出すための集客戦略ということでしょう。
いずれにせよ、かつて栄光を誇ったグローバルソブリンオープンも、今を生きる私たちに多くの示唆を残してくれたのは間違いのないところですね。
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