eMAXIS S&P500高配当クオリティインデックスとは
2023年新春早々、興味深い投資信託が設定されました。
三菱UFJ国際投信が設定した【eMAXIS S&P500高配当クオリティインデックス】です。名前の通り、S&P500クオリティ高配当指数(配当込み、円ベース)に連動する投資成果を目指す投資信託です。
S&P500クオリティ高配当指数とは、S&P500ダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが開発した株式指数です。2018年4月から算出されていますが、インデックス自体は1994年12月に遡及して計算が出されています。
採用銘柄は親指数(S&P500指数)の構成銘柄から、クオリティ・スコアおよび配当利回りの基準からそれぞれ上位200位以内にランク付けされる銘柄を抽出したものです。原則として両方の基準を満たす銘柄を均等に組み入れます。
クオリティ・スコアを収益の創出、収益の質、および財務の健全性の組み合わせとして下図のように定義しています。
出典:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス
アクルーアルは聞き慣れないかもしれません。人によって定義が異なりますが、以下の式で算出されることが多いです。
- アクルーアル=(当期純利益+特別損失-特別利益)-営業キャッシュフロー
つまり、企業の利益が「現金収入を伴う質の高い利益か」を検証するためのものです。主な用途は、企業の不透明な会計処理や粉飾決算を見抜くための指標や株式投資の指標です。
「収益の質」を判断する指標にふさわしいということでしょう。
配当利回りだけで選ぶと株価の下落による配当利回りが上昇した企業を選定するケースがあります。このインデックスの意図は、「クオリティ」を加味することで、ことになるのを防ぐということです。
配当利回りを追求するのではなく、配当の安定性を追求しているインデックスといえます。
時価総額加重平均ではなく均等投資です。GICSの各セクターで25%を上限としますので、定期的にリバランスされます。インデックスのリバランスは原則年に2回で6月と12月の第3金曜日です。
株式市場の下落局面で強みを発揮するインデックスと評価できる
投資信託自体は2023年1月に設定されたばかりですから、基準価額のヒストリーが少ないため、商品の目論見書もインデックスの実績を掲載しています。
2021年以降のパフォーマンスが好調です。9月までのデータとはいえ、2022年にプラスなのは注目されてよいでしょう。
いうまでもなく、2022年のS&P500は年初から下落傾向にありました。 S&P500クオリティ高配当指数は配当利回りも重視しますから、S&P500採用銘柄にも多い無配銘柄は除外されます。
例えばアルファベットやアマゾンといったS&P500で大きなウエイトを占める無配のハイテク株が含まれていません。結果的にこのインデックスのポリシーは、特に2022年以降のハイテク株の低迷の影響を受けにくい形になっていると想像されます。
インデックスの資料によれば、1996 年 12 月以降の極端な市場イベントにおいて、このインデックスは強みを発揮しているとのことです。
たとえば、2000 年の IT バブル(2000 年 9 月~ 2002 年 8 月まで)の期間、このインデックスはS&P 500 を累計で 55%アウトパフォームしました。一方で年率の実現ボラティリティは S&P 500 を 3%下回っています。
2008 年の世界金融危機(いわゆるリーマンショック)の期間は、このインデックスがS&P 500 を 7%アウトパフォームしています。
株式市場全体が低迷するとき、それでも株式市場に資金を向ける人は企業のクオリティを重視する傾向があります。
業績が悪化しにくいとか、経営破綻しにくいといった要素です。このインデックスはそのような特徴がある企業の株式で構成されているということになります。
eMAXIS S&P500高配当クオリティインデックスの概要
改めて、投資信託を確認します。信託報酬率は、現在年0.33%です。純資産が拡大すると引き下げられるルールです。
eMAXISシリーズですが、名称に”Slim”がありません。コストにこだわったわけではなく、違う株式インデックスへの投資機会を提供したということでしょう。
購入時手数料と信託財産留保額はありません。決算は年に1度です。分配の可能性があります。こちらは一般NISAで購入が可能です。なお、為替ヘッジは行いません。
SBI証券、楽天証券、マネックス証券のみが取り扱っています。
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昨今、円建て商品の充実が実感されるところですね。
いずれにしてもアセットの内外分散は必須ですね。
コアというよりもサテライト向きのインデックスと見ました。