ハードアセット投資とオフバランスの重要性
不動産やインフラといったハードアセットは、借り入れができるためインフレ耐性が強く、キャッシュフローを生み出す資産として長く投資家に支持されてきました。
金融機関産の長期融資を使う以上、投資家の多くは長期保有を前提としています。しかし、金利上昇や金融機関の融資環境を考えると持ち切りの姿勢には相応のリスクがあります。
ここで考えておきたいのが、リートのようなオフバランスの発想です。より柔軟な資産管理が可能になります。
金利上昇と資金繰りリスク
金利が上昇すれば、借入コストが収益を直撃します。返済比率が高い投資家はキャッシュフローが圧迫され、ちょっとした空室や修繕で資金繰りが厳しくなります。自己名義での保有を続ければ、資産は増えてもバランスシートは重くなり、新規融資の余地が狭まります。
特に、評価の伸びない築古や地方物件などはより厳しくなるでしょう。
そこで出てくるのが、マーケットでの売却を前提に資産を入れ替えるという発想です。売却を行うことで、個人のバランスシートを圧縮し、次の投資機会へ備えることができます。先に述べたオフバランスです。
売却によるオフバランス効果
シンプルに物件を売却するだけでも、当たり前ですが資産と負債は軽くなります。そういう意味では、資産を持ち切るよりも入れ替えを意識する方が健全です。
売却で得た資金を新規の物件に振り向ければ、収益構造を改善できます。築古で修繕リスクが高い資産を手放し、収益性の高い新築や好立地物件へシフトする。これがオフバランスの実務的な意味合いです。
税務面を考慮しつつ、持続可能な資産増をめざす
売却益には譲渡所得税がかかります。個人の場合は短期譲渡なら税率は高く、長期譲渡なら抑えられます。具体的には、所有期間5年以下の短期譲渡所得は、所得税30%と住民税9%が課され、合計39%という高い税率が適用されます。
一方、5年を超える長期譲渡所得であれば、所得税15%と住民税5%の合計20%に抑えられます。この差は極めて大きく、売却のタイミングを判断する際の重要な要素となります。なお、居住用財産の3,000万円特別控除や特定居住用財産の買換え特例は自宅売買の時には知っておきたい制度ですね。
法人の場合は短期と長期の区別がありません。譲渡益はすべて通常の法人所得に含められ、法人税率で課税されます。詳述は避けますが、実効税率は約30パーセント前後で推移しています。したがって短期で売却する場合は法人の方が税負担が軽くなることが多いです。他の事業所得との合算も見逃せないところでしょう。
法人は減価償却をフルに損金計上できますが、長期で保有すると簿価が減り、売却時に譲渡益が膨らんで課税が一気に重くなります。いずれにせよ資産を持ち切れば含み益が増え、出口課税が重くなる構造は避けられません。
まさに「行って来い」の利益なので売却のタイミングが大事なのは共通です。
なお、個人投資家の場合は累進課税に直結します。所得圧縮の側面で償却の大きなハードアセットを組み合わせ、コントロールすることが可能なのはそういうことです。例えば、定年やFIREを見据えて償却の大きな物件を持っておき、退職後にちょこちょこ売っていけば、利益を先送りのような形にできます。
償却を使えるマンションや太陽光のセカンダリが昨今再び人気なのは、FIREの流行とバブル世代の退職と無関係ではないでしょう。特に年収が高い高属性サラリーマンは知識として知っておいたほうが良いです。
なぜなら、給与所得による税負担が大きく、節税効果を伴う投資商品を活用することで、実質的な手取りを増やしやすいからです。加えて、将来の退職金や資産形成を意識する層が増えており、税制や減価償却を理解しているかどうかが、資産戦略に大きな差を生みます。
これはまたどこか別の機会で書くこととしましょう。
出口戦略を前提とした投資、オフバランス
やや話がずれたので戻します。
売らない前提で持つと、市場が変化した際に対応が遅れる可能性があります。資産を入れ替える前提で保有すれば、マーケット環境に応じた柔軟な戦略が取れます。好況期には売却益を実現し、不況期には現金を厚くして次の投資機会を待つ。

そのような考えもできるでしょう。いずれにしても、資産の入れ替えは、単なる売却ではなく、投資戦略の一部として位置付けておくと良いですね。
投資家にとって、ハードアセットの長期保有は魅力的であり続けます。しかし、金利上昇と融資環境の変化により、持ち切る安心感は常に疑ってよいでしょう。売却を前提とした資産の入れ替えは、実務的なオフバランスの手段です。
「資産を抱える」から「資産を入れ替える」へ。金利上昇局面で知っておいてよい方法かと思います。
なお、高属性サラリーマンの償却目的の不動産購入、不動産売却、太陽光売却、などなどの一般的なご相談はblogお問合せから対応可能です。
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