LIFE SHIFT(ライフ・シフト)は長寿社会の生き方指南書
平均寿命100歳時代の到来に備え、生き方を根本的に見直そうという本です。そしてなかなか現実的で悲観的です。非常に私好みです。
本書は今40歳の人は95歳、2007年生まれの人は107歳まで生きるという仮説に立っています。
およそ100年生きるとするならば、定年が65歳としても35年残ります。年金制度自体がこのような長期の給付を想定して設計されていません。そのため、年金だけに頼らない貯蓄や運用が必要になる時代が迫っていると言えそうです。
今まで私たちは「教育を受け、仕事し、引退する」というモデルを基本として生きてきました。しかし、今でさえすでに非正規雇用という形の労働形態が広く浸透し、定年というものがあいまいになってきています。
本書「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」では、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンと3人の例が出てきます。従前のモデルではジミーとジェーンは貧困の可能性がつきまとうとしています。
常に教育をして専門性を磨き、専門性を労働で発揮・還元しつづける時代になりつつあるのかもしれません。厳しいですね。というより、全ての人がそのように専門性を磨き続けるのは無理でしょう。
本当に100年生きることになるのかは別にして、困難な時代を生き抜くための働き方や生き方への提案になっています。
著者のリンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏
リンダ・グラットン氏はロンドン・ビジネススクール教授です。人材論や組織論で非常に評価されており、前著の「ワーク・シフト」は日本でも「2013年ビジネス書大賞」を受賞するなど広く支持されました。アンドリュー・スコット氏はロンドン・ビジネススクールの前副学長です。経済学で著名です。
リンダ・グラットン氏は世界規模の研究組織「働き方コンソーシアム」を主宰しており、ただ日常に流されて未来を迎える人は、たとえ先進国に生まれても、アンダークラスつまり新たな貧困層に陥ってしまうと主張しています。
これは年金制度や医療サービスが高齢化社会の進展に伴い今ほど安価で広く誰でも享受できるものではなくなることや、テクノロジーの進展やグローバリゼーションにより、今ある仕事がどんどん人工知能やより安価な国の労働者に代替され、失われていくことが背景にあります。
この二つに共通することは所得の減少です。どこかの先進国だけの話ではなく、当然日本も当てはまる懸念であり、広く支持されるのは納得できるところです。
この懸念に基づき、「生き方、働き方を意識して変えなければ、産業革命以来ともいえる大きな変化の数々に押し流され続ける」ということを指摘しています。
ではどのように生きるべきなのか
リンダ・グラットン氏によると3つあります。
- 「複数の分野のスペシャリスト」になることです。
- 「人とのつながりを大切にする」ことです。
- 「所得と消費の呪縛から逃れ、幸せの価値観を変えること」です。
1はハードルが高く、理想ですが誰にでもできることではありません。
2は好みはありますが、家族や親族を含めた人間関係のメンテナンスを適切に行えばお互いに尊重し合える良い関係が続けられそうです。
3は人それぞれかもしれませんが、「持続可能なミニマリスト」、というのがリアルな気がします。
25年間学び、25年働き、25年遊ぶ。というのが私の漠然とした生き方モデルでしたが、相当に甘いようだということがわかりました。