たぱぞうの米国株投資

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金融政策だけみると円安間違いなし、だが・・・

日銀の日本銀行政策委員会で新委員2名決定

 少し前の話題なのですが、日本銀行政策委員会の委員に新しく2名が選ばれました。記事にしようと思いつつ、夏休みに入ってしまいました。

 

 為替に影響がある話題だと思いますので、改めて取り上げておきます。

 

 まず、今まで黒田総裁の金融政策に否定的だった木内登英氏、佐藤健裕氏が退任しました。木内・佐藤氏の今までの金融緩和路線に対する主張は以下のようなものでした。

 

「量的・質的金融緩和」の拡大

 金融緩和の拡大は、賛成5名、反対4名での決定。反対は森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員。


 2013年4月4日に決まった量的・質的金融緩和策が拡大され、「マネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加」するよう金融市場調節を行うことになった。

 

 具体的には、長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。買入れの平均残存期間を、7年~10年程度に延長する。

 

 ETFおよびJーREITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

日銀・政策決定会合、金融緩和を拡大(2014年10月)

 

「ETF買い入れ額倍増について」 

 佐藤委員、木内委員が反対。両委員は、マイナス金利は市場機能、金融仲介機能、国債市場の安定性を損ねることから、所要準備額を除く日本銀行当座預金については+0.1%の金利を適用することが妥当とし、反対した。

 金融政策決定会合、ETF買入れ額を倍増(2016年7月)

 

「日銀当座預金にマイナス金利導入」

 佐藤委員は、マイナス金利の導入はマネタリーベースの増加ペースの縮小とあわせて実施すべきであるとして反対した。

 

 木内委員は、マイナス金利の導入は長期国債買入れの安定性を低下させることから、危機時の対応策としてのみ妥当であるとして、反対した。

日本銀行当座預金にマイナス金利を導入(2016年1月)

 

 このように、安倍首相と黒田日銀総裁の金融緩和路線に一石を投じてきたわけです。日本銀行政策委員会審議委員としては両氏は同期です。そして、民主党政権下、野田佳彦首相の元に任命された委員として最後の委員でした。

 

 今回の委員退任に伴い、すべての委員が安倍晋三内閣下での選任ということになります。

片岡剛士氏と鈴木人司氏が日本銀行政策委員に

 片岡剛士氏はアベノミクスを支持しており、金融緩和に積極的です。三菱UFJリサーチ&コンサルティング出身の44歳、新進気鋭のエコノミストです。リフレ派とされており、著作はもちろん以下の記者会見の発言からも伝わってきます。

 2013 年 4月以降、黒田総裁のもと大規模な金融緩和が始まりまして、その結果、資産市場や失業率などの実体経済、経済状況は改善してきています。

 

 ただ、ご承知の通り、政府と日本銀行が共同声明で締結している 2%の「物価安定の目標」については、現状は達成まで遠い状況です。

 

 2%の「物価安定の目標」を達成し、物価の安定を図ること、これを目指して色々な皆様方の力を借りながら、議論を進めて実際の政策を実行してまいりたいと思っています。

 

 鈴木人司氏は三菱東京UFJ銀行出身です。奇しくも三菱系から2名同時に選ばれたことになります。

 今回ご退任されたお二人が、会合で反対されていることも多いということで、メディアにおいて、9 月の金融政策決定会合が全員賛成になるのではないかとか、色々な想像に基づく記事等があるのですが、まずもって私
自身がリフレ派であるか、反リフレ派であるかについては、リフレ派と反リフレ派ということの定義は何なのかということもありますが、詳しく存じ上げておりません。

 

 あくまでも、ある意味ではニュートラルということで、先程来の国民経済の健全な発展に資するものかどうかということを、その時々の経済・
金融情勢に応じて、真剣に考えてまいりたいと考えています

 

 ということですから、片岡氏ほど立場は明確なわけではないですね。ただ、以下の発言に両氏の主張を見ることができます。

 

(問) お二人は、これから 5 年間任期があるわけですが、その間に物価目標が達成できるかどうかの見通しについては、どのように思っていらっしゃいますか。


(鈴木委員) なんとしても達成したいと思います。


(片岡委員) 先程お話しさせて頂いた通り、日本銀行は、できる限り早期に「物価安定の目標」を達成することを 1 つの使命、目標として掲げています。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1707b.pdf

 

 非常に言葉を選びながらも、やはりアベノミクス路線の堅持というところは疑いのないところです。アベノミクスに伴う金融緩和はザックリいうと円の価値を下げる、インフレ前提ということになります。

国内外の金融政策だけ見ると、円安傾向であることは間違いなし

 今回の選任によって、すべての委員が基本的にアベノミクス支持ということになりましたから、緩和規模の大小はあるでしょうが、しばらく今の緩和路線が続くと思ってよいでしょう。

 

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※Yahoo!ドル円チャートから

 つまり、米国・EUが取り組んでいるような金融緩和の出口戦略はまだまだ図られないということです。これはシンプルに円安の要因になると思われます。また、FRBの資産圧縮も明言されており、これも有力な円安要因です。

 

 ただ、ここにきて米国トランプ政権そのものがグダグダしており、政策実行能力に疑義が付き始めています。更迭の嵐が吹き荒れ、そのため、ドルを買いにくい状況も同時に生まれています。とうとう腹心とみられたバノン首席戦略官までもが政権を追われました。

 

 逆に言うと、トランプ政権が安定すれば一気に円安に傾く可能性がありそうです。個人的には、手元資金に余裕ができればドル転を積み上げていきたいと思っています。

 

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