たぱぞうの米国株投資

米国株投資ブログ。某投資顧問のアドバイザー。メディア実績/日経マネー・ヴェリタス・CNBC・ザイなど

年金支給開始年齢は68歳と言わず70歳にしたほうがいい

年金支給の開始年齢引き上げは効果的手段

 人類の有史上、かつて例を見ない勢いで進行しているのが日本の高齢化社会です。特に戦後すぐに生まれた団塊世代、その団塊世代の子ども世代である団塊ジュニア世代の人口は大きいです。これらの世代が高齢者になったときに大きな支出が見込まれます。

 

 今現在すでに年金財政がひっ迫しつつあります。枯渇する年金に対する有効な処方箋は2つです。

  1. 年金支給年齢の引き上げ
  2. 年金支給額の実質的な減額

 年金支給年齢の引き上げを行えば、支給期間と生涯の支給額が少なくなります。最も効果的な方法です。先日、68歳からの支給を検討している旨の発表が財務省の財政制度等審議会財政制度分科会より出されました。非常に的確です。

 

 年金支給額の減額も効果があります。しかし、この減額というのは非常に難しいです。目に見えて手取りの年金が減るためです。目に見えて年金が減額になると、選挙で勝てなくなります。そのため、どの政党も積極的に採用しようとしません。

 

 日本の借金である国債と同じ戦略になりますが「マイルドなインフレ」を起こして、実質的に支給額を減額していくという方法が有効になります。

 

 ただし、同時に今までの積立額も目減りします。そのため、同時にリスク資産を増やして運用効率を上げるという選択が現実味を帯びてきます。

 

 財務省が4月11日に出した資料が大変秀逸ですので、これをもとに今回は話を進めていきます。

高齢者福祉に偏った日本の社会保障

 現在、日本の社会保障は年金・医療・介護の3本柱がメインになっています。そのため、子ども・子育てに対するサポートが薄く、結果として少子高齢化を加速させてきました。社会保障と言いつつ、高齢者保障になっているのです。

 

 保育園のキャパシティが少ないことに伴う待機児童問題などがあります。また、所得が増えないから共働きをしているにもかかわらず、高額な保育園料などが若者世代の家計を圧迫しています。

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 グラフを見ても分かるように、すでに専業主婦というのは日本人の一般的な家庭では成り立ちにくくなっています。もちろん、仕事には「やりがい」や「自己実現」といったポジティブな部分もあります。

 

 しかし、現実には夫婦で働かないと収入面で家族が成り立たないという側面が強くあります。にもかかわらず、保育園が足りず、自己負担も依然として大きいという金銭的現実が切実です。若い世代、特に共働き家庭に対する支援が課題になっています。

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 政府は社会保障費の使い道を全世代に広げていく試みをしています。富の配分を正しく行わないと、ますます少子化に拍車がかかります。

年金に限らず激増する社会保障費に打つ手なし

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 見て分かるように、1970年頃までは日本の社会保障費は微々たるものでした。平均寿命の伸長とともに社会保障費は激増しています。2017年には120兆円もの社会保障給付費があります。この流れはとどまるところを知らず、今後も増え続けます。

 

 2025年には150兆円に達すると見込まれています。このスピードは加速度的と言って良いでしょう。社会保障費の増加を少しでも緩やかにするために、薬価引き下げ、医療費自己負担増、年金開始年齢の引き上げなどが検討されています。

 

 日本の国民所得が400兆円、国家予算額が90兆円、1年間の税収が60兆円程度であることを考えるといかに巨額な支出が発生しているか分かります。2010年前後には100兆円を突破したことが騒がれました。それから10年近くで20兆円も増えたということです。

 

 対応が遅くなればなるほど、今の現役世代への負債となって問題が先送りされます。

社会保障費の公費負担額は日本の税収額の4分の3にも達する

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 社会保障費のうち、保険料収入はおよそ70兆円あります。これだけでは当然足りず、公費からの補てんが必要になっています。

 

 税金や国債発行に伴う公費による補てん額は46兆円です。これは殆ど日本の1年間の税収のおよそ75%に匹敵します。不景気で税収が減ればもっと比率は上がります。つまり、日本という国は社会保障関連の支出だけで1年間の税収の多くを食いつぶす国なのです。

 

 これは2つのことを意味します。

  1. 国債発行が前提の国家運営になっている
  2. 国の発展に必要な投資が殆ど不可能になっている

 こういうことです。借金である国債を発行し、どうにか公共事業や文教科学費といった費用を捻出しているのです。

 

 そもそも国家予算が100兆円規模です。国債発行を33兆円前後行い、成り立たせているのが今の国家財政なのです。積み重なった1000兆円を超える国債を「希釈する」ためにもコントロールされたマイルドなインフレにする、というのがもう一つのシナリオです。

年金支給額引き上げの合意形成には時間がかかる

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 年金支給年齢の引き上げは日本に限りません。高齢化の進む先進諸国にとって共通の課題です。社会保障費の支出を減らすのに最も効果的な方法の1つだからです。しかし、年金受給権はある意味で既得権益です。そのため、合意形成に時間がかかります。

 

 日本の例だと前回引き上げ決定した2000年から完了までに25年から30年もかかっています。長すぎます。こうしている間に高齢化社会は進展し、ますます社会保障費は増大しました。

年金支給開始年齢は68歳と言わずさっさと70歳にすべし

 人口動態というのは予測のしやすい統計データです。予測値に殆ど近似します。それから導き出される社会保障費の動態も信頼性の高いものです。つまり、描いている社会保障費の増大は殆ど確実と言えます。

 

 今の現役世代にさらなる負担が増えることは明白です。

  1. 年金開始年齢70歳
  2. 定年退職70歳
  3. 医療費自己負担割合増

 これらは避けられません。もっとも、今の現役世代が高齢者になるころには実現しているでしょう。いや、そのころには75歳が定年かもしれませんね。しかし、それでは遅いのです。

 

 今の30代40代というのは、受験戦争が厳しく、就職も氷河期という世代でした。さらに子育て支援も非常に薄かったという世代です。最近になって子育て世代への社会保障が叫ばれるようになりましたが、すでに子育て繁忙期を終えつつある家庭もあります。

 

 つまり、今の30代40代は時すでに遅し。子育て支援策を受けられない可能性があるということです。

 

 不利益はこれにとどまらず、高齢者になってからも「自分たちは社会保障の負担をしてきたのに、十分な社会保障を受けられない」という世代になる可能性があります。というよりも、このままならばそうなるでしょう。

 

 年金支給年齢を68歳に引き上げるというのは実現にかかる年数を考えると不十分です。一気に70歳まで上げてしまう、いや、75歳まで上げてしまったほうが社会保障費の面からは本当は良いでしょう。

 

 しかし、それは不可能です。大反対が起きます。もし実現したとしても、収入が失われる人が続出します。つまり、社会不安に繋がります。

 

 何もできない、中途半端な政策しか採用できない。つまり、「どうしようもない」状態が近づきつつあるのです。換言すると、日本人であるというだけで誰もが最低限の生活ができた、豊穣の時代は過ぎつつあるということです。

 

 今を生きるということ。

 未来を生きるということ。

 

 国が私たちの生活を担保する良き時代から、自立した経済活動が求められる時代に変化しているということですね。

 

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