たぱぞうの米国株投資

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千年投資の公理ー売られ過ぎの優良企業を買う

千年投資の公理は永遠不滅のバフェット流を教えてくれる

 ウォーレン・バフェット氏の投資を理解するうえで欠かせない「経済的な堀」、つまりエコノミックモートについて詳述している本です。長期投資を目指す個人投資家にとって知っておくべき経済的な堀ですが、この本を読むことで視点が磨かれます。

 

 「本書を読めば経済的な濠を測定する専門家になることができる」と文中で豪語されています。将来の優れた企業を格安で買えたり、堀が無いのに永続的な強みがあるように見える企業を見分けることができる、その第一歩というわけですね。

千年投資の公理でいうところの経済的な堀の考え方

 まず、経済的な濠ですが、本書「千年投資の公理」では以下の4つであるとしています。

  1. 無形資産
  2. 顧客の乗り換えコスト
  3. ネットワーク効果
  4. コストの優位性

 順を追って紹介します。

無形資産とは

  ここでいう無形資産とはブランドや特許、行政認可のことです。

 

 例で示されているのはティファニーです。青いオシャレな箱に入ったシルバーにたちまち付加価値がつく、つまり利益率が高くなるということをブランドの一例として取り上げています。

 

 クルマで言うならばベンツ、アスピリンで言うならばバイエルなど多くのブランド例が出ています。行政認可では債券の格付け期間として指定を受けているムーディーズの高い利益率が経済的な堀の好例とされています。

顧客の乗り換えコストとは

  これは分かりやすい例として銀行口座が挙げられています。給与振込口座に伴う引き落とし口座は変更に手間がかかることから、一度口座を指定してしまえば長期にわたって使われ続けるということです。

 

 プレシジョンキャストパーツはジェット機のエンジンや発電機のタービンに使われる高性能金属の製造を請け負っています。取引先はGEなどですが、技術の集積を考えると乗り換えに関わるコストとリスクは小さくなく、好例として紹介されています。

 

 乗り換えコストとは、

  • 顧客の事業に密接に関わり
  • 金銭的な面がかかり
  • 再訓練の必要がある

 ということです。

ネットワーク効果とは

  多くの友人を持つ人が多くのコネクションを持つように、企業活動もネットワークを持つことが強みであるということです。

 

 例えばマイクロソフトは多くの会社にウインドウズといったOSや、ワード、エクセルといったビジネスソフトを提供しています。マイクロソフトよりも安く、遜色ないソフトがあるにはあります。しかし、ビジネス界において殆ど共通言語化しているために、容易に乗り換えられません。近年で言うと、クラウドのazureも強いですね。

 

 ビザ、マスター、アメックスといった寡占状態のカード会社も、利用加盟店という強力なネットワークを持つために、ワイドモートであると考えられます。

 

 このように、ユーザーの数が増えて製品やサービスの価値が向上すると、ネットワーク効果が生まれるということです。クレジットカード、一部の金融取引所が好例として取り上げられています。

コストの優位性とは

 これは端的に言うと、安い商品は強いということです。安い製造過程、有利な場所、独自の資産、規模の大きさという要因があります。

 

 「小さな池の大きな魚でいるほうが、大きな池の小さな魚よりずっとよい。大事なのは魚の絶対的な大きさではなく、魚と池の大きさの比率」であるということです。

 

 コカコーラ・ペプシコ・ディアジオ・食品販社のシスコなどに見られる大規模な配送システムを例にしています。

 

 資本の大きさというのも、全てに当てはまるわけではないですが、1つの目線になりますね。

侵食される堀とは

 堀は長期的で、広ければよいですが、侵食されて競争力を失うこともあります。例えば、イーストマンコダックの写真フィルムはデジカメ全盛によって激減しました。さらには、そのデジカメもスマホによってその座を奪われています。

 

 また、テレビや新聞の広告料はすさまじい勢いでインターネット広告に侵食されています。テレビ・新聞は参入障壁の高い業界でしたが、広告料のシェアはネットが1位になりました。

 

 特に新聞・雑誌の速報性はすっかり失われており、記事の質が改めて問われる時代になっています。

売られ過ぎの優良企業を買う

 近年ほとんど「売られ過ぎの優良企業を買う」という場面はありませんでしたが、久々にチャンスが来ていますね。適正株価という目線を持っておき、チャンスを生かすというのも大事です。

 

 しかし、こういう時こそ資金管理が大事ですので、突っ込みすぎは要注意です。また、永続的な経済的な堀は非常に難しいということも言えます。そのため、決算チェックが必要になるわけです。

 

 もちろん、これからは分かりません。また、時代の流れは加速度的です。つまり、経済的な堀の寿命も短くなることは必然と言って良いと思います。とはいえ、本書で触れる経済的な堀の概念は、銘柄選びとして持っておきたい視点です。

 

 なお、著者のパット・ドーシー氏は1963年生まれ、元モーニングスターのディレクターです。 

千年投資の公理 ──売られ過ぎの優良企業を買う

千年投資の公理 ──売られ過ぎの優良企業を買う

 

定性評価の基本になるが、時代によってそれは移ろう側面も

 経済的な堀を有するかどうか、というのはある意味では永遠の課題かもしれません。というのも、その堀が永続的であるかどうかは極めて難しいからです。例えば、セブンシスターズ時代の石油会社と、現在の石油会社では立ち位置が全く異なります。それはすでに株価に表れていますが、OPEC、非OPEC、それから旧来からの石油会社で価格競争が起きています。

 

 また、たばこ会社も世界的に数は限られますが、以前のような強みは失われつつあります。そういう意味では、この20年で劇的に評価を変えたのが石油関連株とたばこ株、逆の意味ではITハイテクかもしれません。

 

 また、資本や事業内容が評価されるとするならば、新興企業は軒並み堀を有していません。ある程度の安定した企業を狙うことになります。2010年代のネットフリックスのような大化け株を見つけるのは難しいでしょう。

 

 いずれにしても、視点を学ぶという意味では再読した今でも大変参考になるところがあります。しかし、それは時代とともに移ろうもので、自分自身が知識と経験を常に更新しつつ、投資に役立てていく必要がありますね。

 

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  長い目で、堀のある企業に投資をしていくということになりますね。

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